研究課題/領域番号 |
15H05078
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
森山 美知子 広島大学, 医歯薬保健学研究院(保), 教授 (80264977)
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研究分担者 |
加澤 佳奈 広島大学, 医歯薬保健学研究院(保), 特任助教 (10740102)
山下 英尚 広島大学, 大学病院, 講師 (50294591)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 慢性病看護学 / 睡眠障害 |
研究実績の概要 |
これまで単独で対策が講じられることの多かった睡眠障害について、研究者らが長年にわたって構築してきた慢性疾患管理の手法を基盤に、企業の健康経営、慢性疾患管理、ケースマネジメントの視点からとらえ直し、睡眠障害の①簡便な定量的な把握方法の開発とパターン分類、②ターゲット集団の抽出、③リスク特性に応じた個別介入のための予防・改善プログラムの構築、④健康経営への提案を行い、睡眠を基盤とする慢性疾患管理を構築、検証するものである。 平成27年度は、睡眠障害のターゲット集団の把握の仕組みを構築するために、1企業の約3000名分の診療報酬データを用いて、メンタル疾患罹患者数と向精神薬の処方状況調査を行い、睡眠薬や抗うつ薬などの向精神薬を内服しながら企業で働く者の実態を明らかにした。結果として、企業で行うメンタル疾患対策やプレゼンティズム対策には、うつ病に加えて睡眠障害に対する介入が必要であることが示された。 続いて、睡眠障害を有し就労している人30人に対して、面接調査と睡眠・活動・抑うつ気分の測定を行った。面接調査の結果、睡眠障害による仕事への影響と睡眠障害を発症するプロセスが明らかとなった。また測定の結果から、抑うつ得点が高いが精神科の受診歴はなく、睡眠障害の自覚を持ち就労している人が存在していることが明らかになった。さらに測定の結果より、睡眠計・活動量計・質問紙を用いて睡眠障害を有する人を抽出できる可能性が示された。 以上の結果から、今後の看護介入について、睡眠障害があり生産性の低下が予測される人を簡便で定量的に抽出し、構造的な介入が可能となる睡眠障害疾病管理プログラムに向けた重要な示唆が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(研究1)睡眠障害ターゲット集団の把握の仕組みの構築及び(研究2)睡眠障害の客観的・定量的な把握方法の構築(パターンの特定)が終了し、(研究3)睡眠障害の改善を追加した慢性疾患セルフマネジメントプログラムの構築を現在行っている。平成28年度後半から介入研究をスタートする計画である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度前半は、睡眠障害の改善を追加した慢性疾患セルフマネジメントプログラムの構築を行う(研究3)。研究2で見出した要因/パターンから、対処方法をマッチングさせ、そのアルゴリズムを盛り込んだ慢性疾患セルフマネジメントプログラムを構築する。基本は6ヶ月のプログラムとし、2 クール(12 ヶ月)とする予定。プログラムの基礎としては、睡眠障害の要因の特定とそれに合致した対処方法を示すものであるが、一方で行動変容としてのリスク要因の理解とセルフマネジメントスキルの獲得を促す(内発型動機付け)。アクションプランの作成と定期的評価により自己効力感を向上させる。セルフモニタリングを促す。プログラム対象疾患群は、慢性炎症・動脈硬化疾患共通プログラム(糖尿病、糖尿病腎症、CKD、脳卒中・虚血性心疾患の発症予防・再発予防)とする。うつが主症状となるものは、フィールド確保が困難なことから、上記慢性疾患からアプローチする。テキストと自己管理手帳(セルフモニタリング用)やその他教材を作成する。 平成28年度後半は、研究3で構築した睡眠障害の改善を追加した慢性疾患セルフマネジメントプログラムの効果測定を行う(研究4)。無作為化比較試験(Pilot study)とし、健康経営に関心をもつ1-2の企業の社員に対して実施する。介入群には睡眠障害の改善を追加したセルフマネジメントプログラムを実施し、対照群には森山らが開発した従来のプログラムを実施する。参加者はレセプト及び健診データから、睡眠障害に関するレセプトがある者、慢性炎症・動脈硬化疾患(生活習慣病)を有するもので、研究1で構築した抽出方法で抽出された者とする。評価指標は、睡眠障害の改善度、生理学的データ、プロセス指標、人的指標、社会的損失・医療経済学的指標とする。分析については、評価指標について2 群間比較を行う。
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