睡眠障害について、研究者らが構築してきた慢性疾患管理の手法を基盤に、企業の健康経営、慢性疾患管理の視点からとらえ直し、睡眠障害の①簡便な定量的な把握方法の開発とパターン分類、②ターゲット集団の抽出、③リスク特性に応じた個別介入のための予防・改善プログラムの構築、④健康経営への提案を行い、睡眠を基盤とする慢性疾患管理の構築と検証を目的に実施した。 平成29年度は、(1)広島市国民健康保険・広島県組合国保被保険者、全国健康保険協会広島支部及び健康保険組合連合会広島の加入者で糖尿病性腎症1~3期の者に対して「睡眠と活動の視点を加えた糖尿病性腎症重症化予防プログラムの運用可能性と効果」(一群前後比較試験)を継続実施した(終了)。質問紙で睡眠障害を有する者(46%)を把握し、糖尿病管理の中で睡眠改善のプログラムを展開、睡眠計と尺度によって効果を測定した。結果(6月後)、糖尿病の指標は有意に改善したが、睡眠については4人が改善、2人が身体症状との関連で悪化した。一方で、睡眠プログラムの評価は高かった。結果の詳細分析や健康経営との関係は分析中である。 加えて、(2)睡眠障害を自覚している企業の従業員に直接介入する「睡眠困難を自覚する就業者のワークエンゲージメントに対する職域睡眠保健指導の有効性に関する非ランダム化単群時系列デザイン試験」を実施している。睡眠認知行動療法を基盤とした、また研究1と2の結果に基づいた、症状の発生要因や増悪因子のアセスメントと心理社会的な問題解決の視点を加えた職域睡眠保健指導を開始し、介入を実施することで非介入期と比べてワークエンゲージメントが向上するか否か、労働生産性の向上や睡眠指標の改善が得られるかを検証する(単群で非介入期(2か月間)と介入期(2か月間))。登録者数は100人を予定し、現在も介入実施中である。
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