研究実績の概要 |
本研究は、分子標的治療を受ける患者が主体的に服薬と皮膚障害の重症度とのバランスをとり、安全、最適に治療を継続するためのがん患者イニシアチブ皮膚障害予防・管理プログラムの実用化を試みることが目的である。 平成28年度は、分子標的治療を受けるがん患者の皮膚障害のセルフマネジメントの実態を明らかにすることを目指した。1)切除不能な進行・再発大腸がん患者を対象にした質的研究では、分子標的治療を受ける患者の皮膚障害に関するセルフマネジントの概念化を目的に進めている。2)量的研究では、皮膚障害のあるがん患者のQOLに関する横断研究を実施し、データ収集、分析まで終了した。この研究では、分子標的治療薬に伴う皮膚障害の中でも外見に影響する、顔のざ瘡様皮疹、乾燥、かゆみという症状に焦点化した。対象者はこれらの症状を有する肺がん患者と消化器系がん患者で、QOL(EQ-5D, DLQI)と精神的適応(MAC)の実態と関連性を明らかにした。 解析の結果、患者の年齢はQOLの複数の項目との有意な相関を認め、特に対人関係など社会面に関する複数の項目との相関を認めた。また心理面(不安、抑うつ)との相関も認めた。 皮膚障害のある患者のmental adjustment styleは、fighting spirit, anxious preoccupation, fatalism, helpless/hopeless, avoidanceの順で高かった。DLQI とMACの影響を検定した結果、DLQIのSymptom and feelingとMACのFatalismとの間に有意差を認めた。 以上から、分子標的治療に伴う皮膚障害が患者のQOLに影響し、中でも年齢や心理状態とQOLの社会面に影響することと、mental adjustment styleの特徴を示された。現在、解析を終え、投稿の準備を進めている。
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