研究課題/領域番号 |
15H05089
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
戈木クレイグヒル 滋子 慶應義塾大学, 看護医療学部(信濃町), 教授 (10161845)
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研究分担者 |
増田 真也 慶應義塾大学, 看護医療学部(藤沢), 准教授 (80291285)
西名 諒平 慶應義塾大学, 看護医療学部(信濃町), 助教 (70770577)
中田 諭 聖路加国際大学, 大学院看護学研究科, 助教 (90781477)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 小児集中治療室 / 闘病環境 / 医療者-家族関係 / 両親の体験 |
研究実績の概要 |
本研究は,質的研究部分と量的研究部分に分かれているため,2つに分けて説明したい。 <質的研究> 1年目に収集したデータの分析結果から,現象を正確に把握するためには,とくに,面会時間の制限によって生じる闘病環境の違いを明らかにする必要があると感じた。そこで,本年度,新たに3施設(M総合病院,S小児病院,K大学病院)に研究を依頼した。3施設とも各部署との調整や倫理審査に時間を要したものの,12月からM総合病院でのデータ収集を開始し,残りの2施設については,次年度5月からデータ収集を始めることが可能となった。これらの施設でのデータ収集により,現象内にある概念のバリエーションを捉えることが期待できると考えている。 <量的研究> 質的研究の分析結果を基に,質問項目を作成した。くわえて,文献検討結果から,本研究に適切と考えられる4スケールを選択し,各質問紙の日本語版を作成した研究者から使用許可を得た。最終的に,自作の48問,不安尺度(GAD-7)から8問,抑うつ尺度(PHQ-9)から9問,PTSD尺度(PCL-S)から17問,ソーシャル・サポート尺度(Multidimensional Social Support Scale)から12問の質問紙を完成した。全国調査では,なるべくたくさんの協力施設を得ることが重要となるため,本年度はその開拓にも力を入れた。その結果,46施設(PICU28施設,小児も入院するICU18施設)から,前向きに検討したいという回答を得た。残念ながら,具体的な交渉と倫理審査手続きを始めた後,5施設からは断られたものの,まもなく調査を始めることができる施設もある。次年度は,まだ回答のない施設との交渉を続ける一方で,新たな施設への交渉も開始したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の質的研究部分では,異なる特徴を持った協力施設を得ることが重要である。幸い,本年度も新たな3施設から許可を得ることができた。S小児病院は,PICU14床のうち半分が個室で,集中治療専門医が管理しているという点で,これまでにデータ収集を行った施設とは異なる環境特性を持っている。M総合病院は6床であるが,他と比較して患児の重症度が低く,入室期間が短かい。一方,K大学病院には7床のPICUがあり,面会時間が,隔日15分から毎日2時間に延長されつつあるものの,まだ他の施設に比べて短い。このように異なる特徴を持つ複数の施設でのデータ収集により,概念のバリエーションが充実することが期待できる。 一方,次年度(3年目)から本格的に始める量的研究部分(質問紙をもちいての全国調査)では,研究窓口看護師と研究協力施設の確保が鍵となる。そのため,長年,認定看護師の教育を行ってきた中田に研究分担者として,日本で唯一のPICU関連の学会である「日本小児集中治療研究会」の看護部門のリーダーである専門看護師に研究協力者として研究チームに加わってもらった。また,11月におこなわれた日本小児集中治療研究会主催の小児集中治療ワークショップで,本研究の意義と参加を呼びかけるための企画を催した。以上の結果,すでに41施設が調査への協力を前向きに検討してくれていることから,順調に進んでいると評価できるだろう。
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今後の研究の推進方策 |
質的研究部分に関しては,今年開拓した3施設でのデータ収集をおこない,これまでにデータ収集をおこなった2施設の結果とあわせて,それぞれの施設の闘病環境と,医療者の関わりを入室中の子どもの両親がどう捉えているのかに関わる現象を明らかにしたい。 また,量的研究部分については,上述したように,さらに調査協力施設を増やすべく努力中で,まだ回答をもらっていない施設との交渉を続ける予定である。くわえて,本年度の日本小児集中治療研究会主催の小児集中治療ワークショップで,質的研究部分の研究成果を発表し,本研究の意義を伝えつつ,参加を呼びかけたいと考えている。
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