研究課題/領域番号 |
15H05091
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研究機関 | 聖隷クリストファー大学 |
研究代表者 |
大城 昌平 聖隷クリストファー大学, リハビリテーション学部, 教授 (90387506)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 早産・低出生体重児 / ディベロップメンタルケア / 専門職養成教育プログラム |
研究実績の概要 |
我が国の早産・低出生体重児の出生割合は増加傾向にあり、救命された早産・低出生体重児から発達障害をもつ子どもの割合が高いことが指摘されている。今日の新生児医療では、早産・低出生体重児の救命を図るとともに、子どもと家族の発達とQOLを支援することが大きな課題である。そのためには、早産・低出生体重児の治療環境やケアの「質」を改善することが、早産・低出生体重児の脳発達の正常化を図り、将来の認知・情緒・行動の心の発達を育み、また児と家族の関係性や育児の支援にも有効であると考えられる。このような新生児医療及びケアの質を改善し、児と家族の発達を支援するため、本研究ではケアにかかわる専門職者(医師、看護師、臨床心理士、リハビリ関係職種など)にディベロップメンタルケア(DC)の理念と知識、技術を関するDC教育プログラムを開発し、実践的かつ高度のDCの知識と技術を備えた高度専門職者(DC専門職者)を養成することを通して、DCの展開と人材養成の好循環システムを構築することを目的としている。 平成27年度には、1)子どもや家族の発達を支援する専門職者として倫理的態度、2)児と家族の発達や児の発達過程に伴う医学・心理学・神経科学的知識、3)DCの理論と実践に基づく「家族中心のケア」「個別的なケア」のケアの理論的背景、4)DCの実践的ケア技術を取得することを目的とした教育的・支援的なプログラムを開発した。 平成28年度は、DC教育プログラムの実施にあたって、プログラムの教育教材の開発・作成と、DC教育プログラムによる研修会を実施した。15名の看護師・理学療法士・臨床心理士が受講し、受講後アンケート結果の分析から、DC教育プログラムは受講者の臨床スキルを高め、児と家族へのケアと支援、並びに施設におけるDCの推進につながる成果が期待できると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに、平成27年度はDC教育プログラムの開発を行い、平成28年度にはその教育教材を開発・作成した。またDC教育プログラムに基づいた研修会を実施した。DC教育プログラムの研修会は4回開催し、看護師・理学療法士・臨床心理士の受講者15名が受講した。現時点の成果評価は、受講者のアンケート調査や聞き取り調査から、1)新生児・早産・低出生体重児の神経行動発達の理解が進んだ、2)DCの理論と実際、及びNIDCAP(Newborn!Individualized!Developmental!Care!and! AssessmentProgram)モデルについての知識が得られた、3)実践的かつ具体的に、児の行動観察方法を学ぶ機会が得られた、4)児の行動観察から、より適切なケア環境やケア提供を実践的に学ぶことができ、臨床活用に有益であった、5)児の行動から神経行動発達のアセスメントの方法を学ぶことができた、6)DCの理論と実践が児と家族の成長・発達を促すうえで重要であることを再認識できた、7)DC教育プログラムでの学びを所属施設でも広めていきたいなど、DC教育プログラムに対する肯定的な意見であった。従って、開発したDC教育プログラムは、受講者のケアに対する意識変化、児の観察スキルとケアスキルの向上、児と家族交流の促進、組織的なDCの推進につながる教育プログラムあると考察した。 平成29年度は、継続してDC教育プログラムも実施しながら、児の成長と発達(短期的な神経行動発達)、親子の愛着形成と育児の状況、ケアスタッフのケア技術や意識変化、組織的なDCの取り組みなどについて研究成果の分析と検討を行なう計画である。また平成29年度後半には、これらの研究成果と事業の実績を評価して、学会や関連セミナー、論文等で公表する計画である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、開発実施したDC教育プログラムの成果分析を行い、成果を公表する計画である。 平成29年度前半に、DC教育プログラムを受講した専門職者及び受講者の勤務施設に管理されている児と家族、およびスタッフを対象として、児の成長と発達(短期的な神経行動発達)、親子の愛着形成と育児の状況、ケアスタッフのケア技術や意識変化、組織的なDCの変革などについてを検討する。対象児の医学的(合併症の有無、呼吸管理期間、体重増加など)、神経行動発達指標としてブラゼルトン神経行動評価による発達評価を行う。親のケア参加、母子相互作用、育児姿勢、育児ストレスについて観察や質問紙、聞き取り調査により行う。また、ケアスタッフのケア技術や意識変化などについて、観察や質問紙、聞き取り調査などで実施する。 平成29年度後半には、上記の収集したデ-タを量的・質的に整理・分析し、DC教育プログラムの成果を検証し、事業の実績を評価・公表する。 以上、3年間の研究実施計画によって、事業の総括として、関係学会等にも働きかけを行い、DC教育プログラムによる研修システムを確立することで、DC高度専門職者の養成教育システムと認定制度の確立も目指し、それにより新生児医療におけるDCの発展と、それを担う人材養成の好循環システムを組織的に形成する。
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