研究課題
本科研費課題開始前から3年間、ゴビ砂漠(モンゴル)において黄砂発生解明のための観測を実施してきた。この観測から、(1)クラストの形成・崩壊、(2)レキの有無、(3)地形(谷底が黄砂発生ホットスポット)、(4)谷底植生量が、黄砂発生量の多寡を決定する重要なパラメータであることが分かってきた。本科研課題1年目の平成27年度においても、同様の現地調査を実施したが、この調査において、飛砂がクラスト崩壊を引き起こし、崩壊したクラストから発生する砂が新たな飛砂となる連鎖反応的なクラスト崩壊を引き起こす砂塵嵐に遭遇し、クラスト崩壊における飛砂の重要性を発見した。本課題申請時は、風洞装置によるクラスト強度および崩壊の実験を予定していたが、上記現地調査の結果から、風のみでクラストを崩壊することに限界があると考え、風のみの風洞装置の作成を中止し、森林総合研究所の飛砂風洞を借りて実験する方針に変更した。さらに、飛砂の運動エネルギーを測定するための機材購入および風洞におけるこれらの測定機材配置デザインなど、飛砂風洞実験の準備を進めた。この他に、鳥取大学乾燥地研究センターにおけるクラスト形成実験(室内実験)を行った。さらに、連携研究者(気象研究所)、研究協力者(モンゴル気象水文環境研究所)の協力を得ながら、谷地形の抽出の解析、土壌・地表面データの収集を行い、これらの情報を黄砂数値モデルに入れたときの黄砂発生量の変化を、現地調査で得られた結果と比較するなどの数値解析も実施した。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度観測において、飛砂がクラスト崩壊を引き起こす砂塵嵐に遭遇し、クラスト崩壊における飛砂の重要性を発見した。このため、当初予定していた風洞作成をやめて、森林総合研究所の飛砂風洞を借りて実験することに方針変更した。飛砂風洞実験の準備も整ったため、当初研究計画とほぼ同じペースで研究は進んでいる。本研究には、以上の室内実験以外に、現地調査、数値解析の課題もあるが、これらも当初の計画どおり進んでいる。
予定どおり、春の黄砂シーズンの現地調査は実施し、さらに地表面状態の違い(クラスト、レキ、植生)の調査から、これらの地表面状態と黄砂発生の関係を明らかにしていく。夏の現地調査においては、研究協力者であるモンゴルIRIMHE所属のBuyantogtoh氏とGantsetseg氏によって、データ回収、再セッティング、植生調査などを実施する。室内実験は、石塚氏を中心に鳥取大学乾燥地研究センターのデザートシミュレータなどを用いて、気象環境、土壌粒径、塩基によるクラスト形成・崩壊の違いを明らかにしていく。さらに、森林総合研究所の飛砂風洞装置で、クラスト強度の測定、飛砂によるクラスト崩壊の実験を行う。数値解析は連携研究者の関山氏と研究協力者のBuyantogtoh氏と実施しており、地形データ、NDVI、土壌水分量データから黄砂発生ホットスポットにおける谷の抽出を行う。モンゴルにおける土壌粒径、塩基、レキ分布のGISデータの収集を行う。収集済みのデータについては、土壌分析データとの比較や数値モデルへの応用を通じて、精度を吟味する。9月下旬にBuyantogtoh氏を日本に招聘予定である。
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