研究課題/領域番号 |
15H05118
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
長谷川 浩 金沢大学, 物質化学系, 教授 (90253335)
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研究分担者 |
高橋 信弘 大阪市立大学, 大学院経営学研究科, 教授 (40305610)
三木 理 金沢大学, サステナブルエネルギー研究センター, 教授 (70373777)
水谷 聡 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (80283654)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 環境調査 / 重金属 / バングラデシュ / 水質汚染 |
研究実績の概要 |
本年度は、チッタゴン大学の研究協力者との共同研究体制の下、チッタゴン・ベンガル湾の船舶解体地域周辺における水質及び底質のフィールド調査を7月から3月まで2ヶ月毎に実施した。全体ワークショップを7月にチッタゴン、3月に日本で開催し、現地観測や研究成果の取りまとめを行った。 重金属を対象としたin situ環境分析法については超分子型固相抽出と可搬型液体プラズマ発光分析装置を組み合わせた手法を鉛、ヒ素等について開発した。これらの手法を用いて、観測フィールドの重金属分布を現地調査で明らかにした。また大型海藻のアカモクの幼胚を用いた沿岸海水のバイオアッセイ手法については、アカモク幼胚を用いた毒性評価試験を行った結果、実際のバングラデシュ沿岸海域で採取した試料で生長阻害が明確に認められた。 船舶解体産業を巡る国際・地域経済の動態分析については、前年度実施した実態把握調査からバングラデシュ及びその周辺国が置かれている経済状況を分析し、これを基にアジア諸国の相互依存関係を明らかにした。各国とも他国の経済状況や世界経済の動向から影響を受けやすいことが示された。マテリアルフロー解析では、世界の船舶の解撤状況やシップリサイクル条約への対応状況、船舶に関する有害物質インベントリ作成ガイドラインに関する文献、大型船の有害物質インベントリを調査し、バングラデシュでの船舶解体に伴う環境汚染について検討した。有害物質としては、アスベスト、フロン類、鉛等が挙げられる。特に鉛は現地調査において汚染度が高かったが、鉛蓄電池に由来しており、鉛蓄電池の処理・リサイクルについて対応すべき課題であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新しい観測手法として開発したin situ環境分析法およびバイオアッセイ法を駆使してバングラデシュの現地調査を実施し、船舶解体場において初めて重金属の詳細な汚染状況を明らかにした。またマテリアルフロー解析や国際・地域経済の動態分析についても論文発表や学会において多数の成果報告を行った。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの調査でベンガル湾沿岸域の船舶解体場周囲における空間的な汚染状況を把握できたことから、次年度の計画では定期的なフィールド調査を計画して汚染状況の時間的な変化を明らかにすることを目標とする。またフィールド調査において鉛がWHOのガイドライン値を超過していたことと、船舶の有害物質インベントリにおいても多量の鉛が報告されていることから、現場海水中の鉛に重点的に着目してバイオアッセイ試験によりEC50(50%阻害濃度)、NOEC(無影響濃度)などを明確化するとともに、船舶解体現場およびバングラデシュでの鉛蓄電池のマテリアルフローを推計する予定である。また国際・地域経済の動態分析については、バングラデシュ及びその周辺国が置かれている経済状況や個別産業の調査を併せて行い、個別産業の実態と近隣諸国の相互依存関係を解明する。
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