研究課題/領域番号 |
15H05118
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
長谷川 浩 金沢大学, 物質化学系, 教授 (90253335)
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研究分担者 |
高橋 信弘 大阪市立大学, 大学院経営学研究科, 教授 (40305610)
三木 理 金沢大学, サステナブルエネルギー研究センター, 教授 (70373777)
水谷 聡 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (80283654)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 環境調査 / 重金属 / バングラデシュ / 水質汚染 |
研究実績の概要 |
2017年度は、全体ワークショップを12月にチッタゴン、3月に日本で開催し、現地観測や研究成果を取りまとめて中間報告を行った。フィールド観測においては、今年度は2016年度までの観測で得られた重金属の濃度分布に基づいて様々な環境指標を用いて汚染度を評価した。また新たにベンガル湾沿岸域の船舶解体場における汚染状況の季節変動を明らかにすることを目標として、2017年度から定期的な調査の実施を開始した。本調査は2018年10月まで継続して、最終年度に結果を報告する予定である。観測手法については昨年度の成果を引き継いで発展させており、重金属を対象としたin situ環境分析法について、鉛、ヒ素に加えてセレンの酸化状態別分析法を新たに開発した。また大型海藻アカモクの幼胚を用いた沿岸海水のバイオアッセイ手法(毒性評価試験)について、生長阻害物質のフェノールを基準に用いて比較・評価し、感受性が大型海藻と同程度(フェノールに対するNOEC(無影響濃度)は20mg/L)であることを確認した。 船舶解体産業を巡る国際・地域経済の動態分析に関するサブテーマでは、バングラデシュ及びその周辺国における企業のビジネスのあり方を分析し、為替レートの変動など経済環境の影響をどのように受けているのかを明らかにした。そうした環境変化は、現地の労働者の雇用を不安定にする一つの要因となっている。マテリアルフロー解析では、前年度に引き続き、船舶の有害物質インベントリ作成ガイドラインに基づいて作成された有害物質インベントリを調査し、廃棄される鉛蓄電池が大きな汚染限となることを確認した。さらに鉛蓄電池のリサイクル状況を把握するために、鉛精錬企業へのヒアリングを含めた鉛蓄電池のフローについて調査した。一方でバングラデシュにおける鉛のマテリアルフローについては今後の課題とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本プロジェクトで開発した新しい観測手法について計画以上に多数の論文が国際学術誌に受理され、また国際会議における成果報告も想定を超えて活発に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、ベンガル湾沿岸の船舶解体場周辺地域における重金属の濃度分布に関して定期的なフィールド調査を実施し、汚染状況の季節変化を明らかにする。またアカモク幼胚を用いたバイオアッセイ試験について有害金属の50%阻害濃度、無影響濃度などを明確化するとともに、同沿岸海域で採取した実試料海水に適用して阻害原因となる金属元素を推定する。バングラデシュにおけるマテリアルフロー解析では、特に鉛蓄電池を中心とする鉛のフローの把握に取り組み、PRTR情報の適用方法を検討する。国際・地域経済の動態分析については、これまでに引き続き、バングラデシュ及びその周辺国が置かれている経済状況を分析し、アジア諸国の相互依存関係を解明とともに、個別産業の調査を行い、その実態を解明する。以上、環境化学、都市工学、地域経済学の観点から得られた知見をまとめて、水環境汚染の実態を記述する文理融合型の統合モデル構築を試み、途上国特有の実態に適合した環境対策シナリオを提案する。
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