研究課題/領域番号 |
15H05119
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
王 青躍 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (30344956)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 廃棄バイオマス / 無害化処理 / 資源化 / 大気汚染 / PM2.5 |
研究実績の概要 |
本研究では、CO2の最大排出国の中国都市部とその周辺地域において、大量排出の廃棄バイオマスの実態情報を収集し、廃棄バイオマスの野焼きや薪材などの不適切な焼却・燃焼に伴うCO2, PM2.5排出の抑制に向けて、循環性素材化や低エネルギーコストの無害化処理・化石代替燃料化技術などの大気汚染低減技術の適用を調査し、環境技術導入によるPM2.5や有害物質の生体毒性低減を評価する。特に、環境化学工学、エネルギー学、資源システム工学、並びに生体毒性学等の異分野融合型事例研究を通じて、上述の大気汚染低減技術の開発や適用普及を目指し、現地住民の健康被害を抑制しようとしている。さらに、日中間協力し合い、化石資源依存エネルギーや化学製品を廃棄バイオマスからの循環性化学素材化や化石代替燃料化の可能性を明確な形で切り拓き、循環性炭素資源の創出に貢献しようとしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27-1. 廃棄バイオマスの化学素材化、無害化処理の基礎的予備調査 1.文献調査、資料収集(各都市の廃棄バイオマス(特に草本系、農林業系)の資源量と利用動態など)、廃棄物処理工場(浙江省など)について、調査した。2.農林業系や畜農製品加工業系のモデル都市の選定、エネルギー利用形態、廃棄バイオマス処理実態調査(情報・法令を収集するため、共同研究者の協力を得て、(1)農林業系調査ルート例:羽田→上海市(上海大研究者と合流)農林業系代表都市(浙江省など)→上海市→羽田などの調査を行った。特に、上海都市部における大気中浮遊粒状物質の調査の結果、廃棄バイオマス燃焼などによる深刻な大気汚染を観測した。それらの成果を国内学術誌のほか、Environmental Pollution(Impact factor=4.15), Vol.214, 149-160 (2016) DOI: 10.1016/j.envpol.2016.04.002など、多くの国際誌でも公表し、高い評が得られた。3.野焼きや薪材の不適切焼却・燃焼、各種燃焼装置仕様、普及状況調査を実施した。4. 企業調査による各種ガス化炉の微粉炭燃料(石炭種、複合燃料混焼剤等)情報を調査した。 27-2. 廃棄バイオマスの循環性化学素材化・燃料化の現地適用調査・研究準備について進めてきた。国際学会で招待講演を行った。 1. 地域別廃棄バイオマス排出分布、化学素材・安定化処理技術の種類と資源化システム普及可能性を検討した。 2. 地域性を考慮した都市周辺地域のバイオマス種の選択、循環性炭素資源量を調査した。
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今後の研究の推進方策 |
28-1. 研究地域・計画の見直し、中国関連企業施設・処理装置の適用性調査、28-2. 上海大学材料研究センターと共同して循環性化学素材の研究について、1.廃棄木質バイオマスのフェノール液化・樹脂合成技術、循環性ポリウレタンフォーム、ウレタン樹脂(以下PUF)の開発 (液化酸触媒、条件適正化、性能評価)例えば、廃棄バイオマスを原料としてポリエチレングリコール有機溶媒を用いた液化生成物とイソシアネート類との重合反応によるポリウレタンフォーム、ウレタン樹脂合成、液化条件と各種性能への影響因子を評価する。2.各種廃棄バイオマスからの循環性ポリウレタンフォーム、ウレタンPUF樹脂の試験、地域別木質系廃棄バイオマスを選抜して液化物、残渣組成を含むPUFへの熱可塑性、熱硬化性、断熱性、生分解性等の性能を、密度、圧縮強度、表面形態、寸法安定性、熱伝導率等によって評価、特に、次の項目を調査する。(1)試作PUF試料の凍結破断面をSEMによる表面構造観察、(2)赤外全反射スペクトル法による液化生成物構造解析、(3)ゲル浸透クロマトグラフィーによる液化物分子量分布測定等を日中共同で研究する。28-3.廃棄バイオマスの無害化処理、微粉炭代替燃料化による大気汚染低減技術研究について、1.廃棄バイオマス熱分解による無害化、高分散微粉炭代替燃料における着火性・発熱量・火炎安定性向上、利用特性評価(金属触媒、排出成分評価、2.平成27度から得られた現地資源情報により、廃棄バイオマスの選定、3.前処理の最適化(細粉砕粒度分布、流動性、細孔分布などの条件解析)レボグルコサン等のトレーサ無水糖類、ガス状、イオン・炭素成分、芳香族炭化水素類(PAHs, PACs他)、有害金属等を含有するPM2.5の分析等を行う。
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備考 |
国際誌Environmental Pollutionへの中国都市大気中の発がん性芳香族炭化水素の挙動に関する原著論文が掲載された。
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