研究課題/領域番号 |
15H05122
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
原田 一宏 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (00372087)
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研究分担者 |
藤原 敬大 九州大学, 持続可能な社会のための決断科学センター, 助教 (20637839)
岩永 青史 国立研究開発法人 森林総合研究所, 林業経営・政策領域, 研究員 (60726107)
佐々木 ノピア (KIMPHAT) 兵庫県立大学, 応用情報科学研究科, 准教授 (90382275)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 気候変動 / 森林政策 / コミュニティフォレストリー / 地域住民の生計向上 / REDD+ / 国立公園 / 慣習林 / 東南アジア |
研究実績の概要 |
小課題1では、バッファーゾーンのコミュニティ開発支援策を実施している、ベトナムのBach Ma国立公園にて、地域住民に対して聞き取りをした。国立公園による支援として、非木材林産物採取を行わないかわりに、森林にダメージを与えず、多くの人に利益がある、道路、橋、上水道、集会所などの社会インフラ整備、家畜、養魚、果樹などへの農業投資に使われていることが明らかになった。 小課題1と3のカンボジアでは、近年のカンボジアのREDD+やコミュニティフォレストリーの政策の進展について分析した。現在、カンボジアではコミュニティフォレストリーに関わる2つのREDD+プロジェクトがあるが、炭素クレジット価格が不透明でクレジット購入者がいない中、プロジェクトが失速気味で、今後どのようにプロジェクトを実施していくか不透明な部分があることが明らかになった。 小課題2では、インドネシア・リアウ諸島州カリムン島において、2010年にコミュニティプランテーション(HTR)」の事業許可を取得した組合を対象に調査を実施した。個人ではマングローブを伐採し炭を生産することはできなくなったが、協同組合としてHTRの事業許可を取得することによってマングローブ炭の生産を継続していること、伐採後の再植林のルールが定められたり、個人で売却していた炭が協同組合を通じて売買されるようになったりするなど、森林管理・木材流通に変化も見られることが分かった。また、北スマトラ州とジャンビ州の慣習林を対象に調査を実施した。北スマトラ州では地域住民が長年にわたって彼らが所有する慣習林から樹液を採取し、現金収入として生活してきたこと、その慣習林が政府によるコンセッションに脅かされていることが明らかになった。一方、ジャンビ州では、長年地域住民が守り続けてきた慣習林が県知事によって承認され、今後、国の法律の下、その権利が強化される過程にあることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ベトナムの調査では、制度の概要や州・県レベルでの概要や制度が実施された理由を把握することはできたが、サンプリングの上での世帯調査を行うことまではできなかったため、次年度以降、住民レベルでの聞き取りを実施していく。また、住民への聞き取り調査を経て、REDD+の導入可能性などについて現地大学関係者や地方政府との議論を進めていく予定である。 カンボジアに関しては、同国のコミュニティフォレストリーに関わる法律を整理し、REDD+が実施されているオッドミンチャイ州とモンドルキリ州のREDD+プロジェクトの状況を把握し、地域住民と議論をした。 インドネシア・リアウ州の調査では、HTR協同組合、リアウ諸島州の炭焼きの歴史の概要について把握し、基礎的な統計データ、行政資料の収集を行った。今後、各協同組合員への半構造化インタビューを通じて、HTR政策が組合員の生計向上に与えた効果を明らかにしていく予定である。また異なる地域のHTRの事例との比較を予定している。 ジャンビ州の調査では、慣習林管理に関与しているNGOにて、地方政府が関与して慣習林として法的に認められた経緯などについて情報収集し、地域住民にも聞き取りを実施した。 北スマトラ州では、地域住民に樹液採取の方法について聞き取りをするとともに、彼らの収入や所有する樹木数について質問票を用いて調査を実施した。 ブータンに関しては、今年度は調査許可の問題などもあり、ブータンを訪問することができなかったため、来年度訪問する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
小課題1のベトナムに関しては、「3.現在までの進捗状況」で示したように、ベトナムにおけるバッファーゾーンのコミュニティ開発支援策がREDD+活動の一部として組み込む可能性を模索し、小課題3へとつなげていきたい。 小課題1と小課題3のカンボジアに関しては、これら2つのREDD+プロジェクトをより詳細に分析していきたい。また、REDD+プロジェクトに対する地域住民の意見やパリ合意に対する期待についても、質的量的調査によって明らかにしていきたい。 小課題2のインドネシア・リアウ州の協同組合が生産するマングローブ炭は、日本・中国・韓国・台湾・香港へ輸出されている。州森林局職員の話では、同組合はインドネシアの合法性証明(SVLK)を最近取得し、森林認証(FSCなど)の取得も模索中とのことである。同HTR協同組合を事例に継続的に調査を行い、また必要に応じて森林認証の取得を支援する可能性もあり、この状況を継続的に把握することにより、小課題4(森林認証制度)の成果へとつなげていきたい。 小課題2のインドネシアのジャンビ州の慣習林に関しては、現在REDD+プロジェクトとして登録しようという方向に動いており、今後その状況を追跡することによって、小課題3へとつなげていきたい。また、北スマトラ州の慣習林に関しては、質問票を用いた聞き取り調査を詳細に分析し、追加情報を収集していきたい。 小課題2のブータンに関しては、今年度ブータンを訪問し、今後の研究協力のやり方について打ち合わせをし、また現地にて予備調査を実施したい。また同じく、小課題2の研究対象国として、ネパールを加えたい。
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