研究課題
研究計画の2年目にあたる2016年度は、研究協力者とともにハノイのベトナム考古学院を訪問し、前年度に引き続きベトナム北部のHang Cho遺跡(ホアビン文化)とMan Bac遺跡(新石器時代後期)から出土した動物遺体の資料調査を実施した。特に、Hang Cho遺跡出土動物遺体の調査においては、資料中に淡水性の魚骨が含まれていることを確認し、ホアビン文化期の山岳地域において内水面漁撈が展開していた可能性を明らかにした。Hang Cho遺跡から出土した脊椎動物遺体の同定は2016年度の作業でほぼ完了したので、現在成果を論文にまとめている途中である。イノシシ/ブタ類および初期家禽の可能性が疑われるキジ科鳥骨について、詳細な形態学的検討および分子生物学的検討を進めているが、2015年度に採取したHang Cho遺跡およびMan Bac遺跡出土動物遺体試料のDNA分析および年代測定に関し、有機質の保存が不良なため今のところ良好な結果が得られておらず、2016年度に採取部位を吟味して改めてサンプリングを実施した。新資料として、カッドバ島のCai Bao遺跡(ハロン文化)から出土した動物遺体の分析に着手し、これらがイルカおよび魚類などの海産動物資源を主体としながら少量のシカ類やイノシシ/ブタ類を含む組成であることを予備的に確認した。Cai Bao遺跡出土資料については、2017年度以降の調査において詳細な内容を検討する予定である。その他、2016年6月に開催された日本動物考古学会において、これまでの研究成果の一部を発表した。また、2016年11月にベトナム考古学院のNugyen Anh Tuan研究員を日本に招聘し、更新世ベトナム動物化石の産出状況について公開講演会を開催した。
2: おおむね順調に進展している
当初計画で予定していたHang Cho遺跡出土ホアビン文化期動物遺体の形態分析をほぼ完了した。当初計画ではHui Yao Tien遺跡出土動物遺体の分析に着手する予定であったが、これに代わり、より本研究計画の目的に合致するCai Bao遺跡出土動物遺体の分析を行うこととし、2016年度に初回の調査を実施した。また、当初計画の通り、ベトナム考古学院の研究者を日本に招聘し、公開講演会を実施した。以上の通り、概ね当初計画の通り進展している。
2017年度は、これまでに得たデータをもとに、特にHang Cho遺跡出土動物遺体の分析結果について論文の完成を目指す。また、2016年度に着手した新しい資料であるCai Bao遺跡出土動物遺体(ハロン文化期)と、Hang Cho遺跡出土青銅器時代動物遺体の研究を進める。DNA解析および年代測定に関しては、試料の採取部位を吟味して、良好なデータを得るよう工夫していく。また、ブタの系統の解明のため、東南アジア現生標本のDNA解析を実施する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (1件)
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巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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