研究課題/領域番号 |
15H05132
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
野中 健一 立教大学, 文学部, 教授 (20241284)
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研究分担者 |
池口 明子 横浜国立大学, 教育人間科学部, 准教授 (20387905)
竹中 千里 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (40240808)
宮川 修一 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (60115425)
小野 映介 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (90432228)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アリ塚 / シロアリ / 土地利用 / 農耕 / 生活 / 地理学 |
研究実績の概要 |
シロアリは、アジア・アフリカ各地で食用や飼料として、巣の一部であるアリ塚の土は肥料、薬用、信仰対象など多様な利用がなされ、農漁畜産業、食生活、精神生活において豊かな暮らしを構築する上で持続的に用いられており、重要な資源に位置づけられる。本研究は、シロアリおよびその生産物であるアリ塚を用いた持続的な生物資源利用に注目し、農業・生活の持続性にもたらす貢献、再生力と利用可能性を実証的に明らかにし、アフリカ、アジア、中米地域で現地調査を実施し、その結果をもとに実証的な比較を行い、関わり方と広がりから普遍性を検討することを目的とした。 本年度は、研究の枠組み作りを国際ワークショップによって行った後、東南アジア地域、南部アフリカ地域、中南米地域でのシロアリとアリ塚利用に関する現地調査によるデータ収集を実施した。研究の枠組みと展望は学会発表および論文にて公表し、新たな視点と今後の展開への課題をつくった。 ラオスでは、住民の生活圏内におけるアリ塚分布とアリ塚の形成メカニズムの生態観察を実施し、住民の利用を支える基盤となる、アリ塚分布と位置、アリ塚形成メカニズム、塚内コロニー、農耕利用や利用に関わる信仰を明らかにし、一部を学会発表および論文により公表した。南部アフリカでは、広域調査による利用の特徴とバリエーション、南アフリカ北部を対象とした集落における利用実態(建築材料、食用、薬用)とアリ塚分布の生息環境による分布および形態差を調査し、データのとりまとめをおこなった。メキシコではシロアリの分布と、同様のアリの巣より排出される土の肥料利用を明らかにし、農耕と生物利用に関する新たな知見が得られ、今後の考察および研究課題の構築に有益なものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラオスを調査地として、住民のアリ塚利用を明らかにする上で重要な、アリ塚形成(塚の形成速度、外的ストレスに対する再生可能性、ハタラキアリの行動)に関する観察環境を整備し、そのデータ収集に着手でき、さらに初期データをもとに学会発表ができた。 南アフリカでは、周辺地域の状況をふまえた上で、住民の生活におけるアリ塚、塚の土、シロアリの利用をインテンシブに継続調査できる良好な条件の調査地を見つけることができ、今後の研究を発展させる上での足がかりを作ることができた。またリンポポ大学との今後の研究協議もでき、調査研究の協働体制を作ることができた。 いっぽう、これまでの研究の知見よりアリ塚の農耕利用・土地利用が特徴的であることがわかっており、研究対象地の候補としているジンバブエに関しては、調査許可申請中のため、対象地でのインテンシブな調査を行えず、本年度は広域調査となった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、前年度に設定した調査地において、農業利用、生活の諸側面における利用および認識に関してインテンシブな聞き取りおよび観察調査を実施データ収集につとめる。 本年度は、生態観測と継続観測をうまく行えるように、センシング技術を利用した装置の開発・設置も行う。これにより、シロアリのアリ塚形成の証左となる行動データの収集をめざす。 住民の利用においては、農地と集落および個々の住居とアリ塚との関係からみる土地利用の特徴、アリ塚土利用程度とアリ塚・シロアリの利用持続性を明らかにするために、継続的データ、量的データを集めることにより、利用の実態を定量的に明らかにすることをめざす。
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