研究課題/領域番号 |
15H05133
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
谷岡 勇市郎 北海道大学, 理学研究院, 教授 (40354526)
|
研究分担者 |
高清水 康博 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (10446370)
西村 裕一 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (20208226)
菅原 大助 ふじのくに地球環境史ミュージアム, 学芸課, 准教授 (50436078)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 津波堆積物 / 日本海の巨大津波 / 津波数値計算 |
研究実績の概要 |
2016年7月にロシア科学アカデミー極東支部の共同研究者と伴にロシア沿海州の Valentine湾周辺を訪れ,1993年北海道南西沖地震と1983年日本海中部地震に伴う津波堆積物と考えられる砂層の面的分布調査を実施した.調査したのはおよそ500m四方の低地で,低い砂丘列を開拓して牧草地として使われていた時期があった場所である.津波堆積物として痕跡が残りやすい場所と思われる.調査はハンディジオスライサーもしくはスコップによる掘削で行った.調査地点は35点,うち27点で試料を採取した.1993年の津波堆積物はここで,内陸約300m,標高約4m以下の範囲で,平均3-5cmの土壌に覆われてシート状に分布していた.層厚,平均粒径はともに内陸にいくほど薄層化,細粒化する傾向にあるが,特に旧河川がある低くなった場所で厚く,粗いこともわかった.分布限界近くでは砂層はパッチ状になり,分布は小規模な地形に支配されていた.海側の砂丘上にあって津波で被災した工場の背後には,砂層に石炭片が混在しており,津波が砂丘を越えて砂とともに人工物も運んだ様子もうかがえた. 国土交通省「日本海における大規模地震に関する調査検討会」によって想定された、奥尻島から南部に伸びる想定断層による津波数値計算(浸水計算)を実施した。この計算により13世紀の津波堆積物と考えられるイベントが見つけられた地点を概ね説明できることが分かった.しかし、津波堆積物の詳細な分布は再現できないため、さらなる断層モデルの改良が必要であることが判明した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ロシア科学アカデミーとの共同研究は,今年はこれまでの成果を踏まえ,条件が最も良い1箇所に絞って詳しく調査した.調査結果は土砂移動の数値計算により検証し,まず学会(2017年5月)で報告することとしており、順調に進んでいる.
|
今後の研究の推進方策 |
1993年の津波堆積物については,Valentine湾周辺における分布と地形との関係をさらに詳しく調べる.この地では古津波の堆積物も見つかっているので,年代測定と火山灰の分析を進める.また,古津波の波源を特定するためには津波沿海地方北部海岸でも詳しい調査が必要なため,これまでの予備調査と数値計算結果をもとに候補地を決め、調査を実施する.調査結果を津波数値計算により再現することで日本海に発生する巨大地震の最大のすべり量がどの程度になるかを明らかにする.
|