研究課題/領域番号 |
15H05136
|
研究機関 | 国立研究開発法人土木研究所 |
研究代表者 |
郭 栄珠 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(水災害・リスクマネジメント国際センター), 研究員(移行) (60586642)
|
研究分担者 |
近藤 昭彦 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 教授 (30201495)
Park JongGeol 東京情報大学, 総合情報学部, 准教授 (40337770)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 広域河川氾濫リスク / 気候変動 / 社会経済シナリオ |
研究実績の概要 |
アジア主要河川流域における地表環境の時・空間変化を基にした浸水実績図の作成 1)気候変動及び社会経済シナリオを考慮した流域地表環境の時・空間的変化による浸水リスク変化図作成:アジア主要河川(1km格子の約10 万km2 以上の流域)を対象に、超高解像度大気モデルMRI-AGCM3.2S(20km格子)の複数出力による25年間の現在気候(1985~2004)を基に、将来気候(2075~2099;RCP8.5シナリオ)条件下で、50年確率年最大河川流量の浸水深と将来社会経済条件を考慮した洪水リスク変化(影響人口と経済損失)を評価した。経済リスクは、浸水の暴露範囲に、RCP8.5シナリオに相応する世界共通の社会経済シナリオのSSP5(従来型発展:緩和策の負担が高い)を基に影響人口一人当たり国内総生産をかけ合わせ、社会経済に与える影響の度合を表す影響力係数を考慮した最大社会経済損失を簡易に推定した。アジア域では浸水深変化率が2倍以上に増大する傾向と共に経済損失も大幅に増大することが確認できた。 2)最新複数観測データによる洪水氾濫域マッピング:複数観測データ(MODIS, ALOS-2, ひまわり8号)を用いて洪水マッピングアルゴリズムを開発(時系列シンクロ洪水指数)しつつ、バングラデシュ氾濫域の抽出を試みた。 3)第1回共催ワークショップ開催(ダッカ、6月20日)及び現地調査:共同研究成果を公開発表し、共同研究を強化する非常に重要な機会となった。バングラデシュの中央・地方官庁の防災災害関係者・洪水担当者・NGOなどステークホルダー約50人が出席し、研究レベルから行政・政策を含む実務レベルまで洪水対策も反映できるよう議論した。ワークショップ後、昨年と同様に2015年の水害(水田)が大きかった代表地域で被害の聞き取り調査を行い、浸水域の解析結果とグランドトゥルースデータを比較した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
マルチモデルアンサンブル気候実験データを用いて改良した全球洪水浸水深モデルに対応する、アジア域を対象とした洪水氾濫シミュレーションの再現性を引き続き検証した。また並行して、大洪水発生時に、中解像度の光学衛星MODIS時系列データと複数時期のALOS-2データの浸水実績図を比較し、氾濫シミュレーションの現在条件下での再現性も検討した。さらに、社会経済シナリオを考慮した脆弱性指標データ(一人当たりGDPなど)を格子(1km)毎に空間データ変換・詳細化が可能かどうか検討した。 平成29年度の課題である準リアルタイム洪水氾濫マッピングの開発のため、複数センサーとひまわり8号データをもとに時系列シンクロ洪水指数による準リアルタイム時・空間的浸水変化図の作成を開始した。加えて、小型無人航空機UAVを導入し、広範で詳細な現地情報のグランドトゥルースデータも収集した。 7月1日ダッカでテロ事件が発生、バングラデシュは危険地域に指定され(入国禁止)、メールやビデオ会議のみで共同研究を進めることとなった。しかし、JICAの支援を受け、バングラデシュ水資源省とBWDBの副長官が11月ICHARMを訪問し、相互研究協力強化に向けた打ち合わせを行うことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
1)水文観測データと連携した準リアルタイム大洪水氾濫マッピングの開発:シナリオに基づいた多数の全球河川流量シミュレーションを入力として、氾濫シミュレーション計算と洪水予・警報システムからバングラデシュの全国84水文観測データを融合した洪水氾濫予測図のプロトタイプを試作する。その後、社会経済シナリオに基づいた脆弱性指標による洪水リスク評価も行う。 2)最先端リモートセンシング技術を用いる準リアルタイム大洪水氾濫マッピング試作:ALOS-2、ひまわり8号-9号を主な災害ビッグデータとして時系列分析による氾濫マッピング作成技術高度化に着手する。特に、現在気候の洪水氾濫シミュレーション計算結果の検証および氾濫域洪水リスク・被害マッピング実現に向け、氾濫域抽出アルゴリズムと複数衛星観測データ融合アルゴリズムを開発する。 3)第2回JICA-ICHARM-BWDB共催ワークショップの開催確定:2017年7月15日-16日予定である両国間ワークショップでは、バングラデシュの政府・大学・NGO関係者と2年間の研究成果を共有し、洪水リスクが高い地域のコミュニティまで情報発信を強化する施策案に展開する。洪水予測・リスク管理だけではなく河岸侵食、水資源管理まで拡大し、研究レベルから行政・政策レベルまで水資源管理の対策への反映を目指す。 4)洪水被害現地調査: グランドトゥルースデータと比較し、浸水域のシミュレーション解析結果を修正する。また、浸水痕跡とその稲作水害状況を調べ、既存の稲作被害曲線の修正・更新し、国レベル及び地域レベルの稲作被害分布図をより早く、正確に伝えるために、その汎用性・適用可能性を検討する。
|