研究実績の概要 |
最終年度にあたる平成30年度では,フィリピンについては,昨年度,制度変化のため実施を延期したヌエバ・エシーハ州の参加型有機認証制度について詳しい聞き取りを行い,これまでの研究結果を補完した。また,流通制度については,マカティ市の有機農産物市場を訪れ,卸売り・小売業者から,流通制度についての情報を得ると同時に,アグリ・ツーリズムの動向について,バタンガス州を中心として調査を行った。この結果,依然として有機農産物の市場は富裕層にとどまっているものの,中間層の増加にともない,広報活動等によって国内市場の拡大の可能性が顕在化しつつあることがあきらかになった。 メキシコについては,トラスカラの有機農家と複数の有機市を訪問し、参加型有機認証制度の運営上の課題について知見を深めたほか、アグロエコロジーの翻訳書の出版に向けてメキシコ在住の著者の一人と会い、意見交換を行った。 以上の分析結果は,グローバル化における発展途上国の地域を軸とする有機農業の発展を考える際に,その戦略に統一的視点を与えるための橋頭堡の基礎を提示し得るものであると考えられる。これらの結果は,フィリピンではフィリピン国立大学ロスバニョス校と国際学術会議における論文提出と報告(いずれも英語)によって公表された。また,メキシコについては,政治経済学における理論的側面に着目し,Rosset, Peter and Miguel Altieri, Agroecology: Science and Politicsの訳出を通じて研究の一層の発展を図った。
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