研究課題/領域番号 |
15H05146
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
武内 房司 学習院大学, 文学部, 教授 (30179618)
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研究分担者 |
今井 昭夫 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (20203284)
倉田 明子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 講師 (20636211)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 東洋史 / 民衆宗教 / 先天道 / 道院 / ベトナム / ペナン / シンガポール |
研究実績の概要 |
平成28年度は、まず、 1) 本プロジェクトが主として取り組んでいる「民衆宗教文献」の成立・伝播の過程及びその社会的役割を明らかにするための基礎作業として、ベトナム調査の過程で発掘した宗教文献の読み合わせ会を開催し,今後の解題作成に向けた打合せを行った。 2)2016年8月,ベトナム・ベンチェ省チャウタン県にあるカオダイ教先天派の本部を訪問し,同派の責任者よりその歴史・概況をうかがうことができた。昨年度訪問調査を行った明師道との関係などをより明確に位置づけることが可能となった。また,昨年度に引き続き,ベトナム国立第2アーカイブズセンターにおいて,明師道並びに同派と関係の深いカオダイ教関連文書の調査と蒐集にあたった。また,2017年3月には,チャヴィン省を訪問し,カオダイ教の系譜に連なる「明徳儒教大道」の本部を訪問し,責任者よりその歴史と展開について聞き取りを行った。 3)昨年度に引き続き,ペナン(マレーシア),シンガポールに現存する華人系民衆宗教の施設を調査した。ペナンでは,南島仏堂,世界紅卍字会檳城分会,真空祖師道堂等の施設を訪問し,それぞれの団体の活動や歴史等について聞き取りを行うとともに,所蔵資料・碑刻,写真記録等を確認した。シンガポールでは,昨年度訪問した世界紅卍字会新嘉坡総主会を再訪し,貴重な教団文書の調査を行うことが出来た。 4)台湾台北市南港区にある中央研究院台湾史研究所档案館において台湾総督府公文類纂を閲覧し,台湾総督府や地方政府の公文書の中から関連史料を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ベトナム国家第2アーカイブズセンターなど,ベトナムにおける文書館の公開が進み,アーカイブズ資料を用いて1930年代から40年代にかけての民衆宗教の展開過程を追跡することが可能になりつつあることがその理由としてあげられる。宗教文献を作成・頒布した教団の活動の背景を追うためにも,こうしたアーカイブズ資料の活用は重要な意義を持っている。 また,世界紅卍字会シンガポール総主会において戦時期に作成された教団資料の閲覧を許されたことも本年度の貴重な成果の一つである。宗教教団自身が激動の戦時期のシンガポールやアジアをどう捉えていたかを示す重要な資料であり,今後,これらの資料の分析を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
1) ベトナム調査について:華南より伝播した先天道の系譜を引く明師道からは,1930年代以降,さまざまな宗教団体が自立し分派活動を展開した。なかでも「五支明道」と呼ばれるこれらの五大分派の展開及びそうした教団自立化の動きは,明師道からカオダイ教への展開を辿るうえで極めて重要であり,今後はこれら「五支明道」系宗教施設に対する調査を実施する予定である。さらに,引き続きベトナム南部の宗教運動関連アーカイブズを多数所蔵するベトナム第2アーカイブズセンターにおいて文書資料調査を進める。これまで主として戦時期の宗教運動関係資料を調査してきたが,明師道系教団に対するフランス側の関心は20世紀初期にまで溯ることがわかってきた。そこで,最終年度にあたる今年度は,同文書館において,20世紀初頭から1920年代までの文書資料の所在調査を実施する予定である。 2)マレー・シンガポール調査:昨年度のペナン・シンガポール調査により,先天道とならび東南アジアで盛んとなった帰根門系宗教施設の存在が浮かび上がってきた。そこで,本年は,世界紅卍字会新嘉坡総主会での文献調査を継続する一方,クアラルンプールにおける帰根門系宗教施設を訪ね,文書調査を実施する予定である。 3)これまで撮影してきた宗教文献の解題作成に向けて共同研究会を年5回程度開催し文献解題の刊行に向けた作業を進める。
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