研究課題
平成27年6月30日~7月16日と平成28年2月17日~3月1日にエチオピアのシダーマ・ゾーンで、平成27年7月26日~8月18日と平成27年12月15日~12月30日にウガンダのカプチョーワで、フィールドワークを行ない、それぞれシダーマ語とクプサビニィ語のデータを集めた。データ収集の方法としては以下の二つの方法をとった。まず、フンボルト大学のトム・グルデマン氏とイネス・フィールダー氏の情報構造のプロジェクトのエリシテーション・キットを使い、情報構造の標示パターンを大まかに把握した。もう一つの方法としては、談話(特に民話と日常会話)からデータを採った。どちらの方法を取る際も母語話者の調査協力者に細部に関して質問をして、データの確認をすると同時に、さらにデータを採った。シダーマ語の情報構造については、フォーカス標示およびトピック標示のパターンと疑似分裂文・分裂文を中心に、他の東クシ語派の言語との違いを明らかにするような方法で、平成27年11月にフンボルト大学のコロキアムで発表を行ない、アフリカの言語の情報構造の専門家であるトム・グルデマン氏、イネス・フィールダー氏、森本雪子氏らと意見交換を行なった。他にも、国際認知言語学会(イギリスのニュー・カッスル)と世界アフリカ言語学会議(京都)でそれぞれ2本の口頭発表を行なった。後者においては、アフリカのイベントの統合パターンの通言語的研究に関するワークショップを企画した。さらにこのトピックに関して東京外国語大学の共同プロジェクトの成果物として特集の論文集を出版した。以上の研究の成果は、深い研究が十分になされていない両言語の現象を理論的に中立な立場から記述し、個別言語の研究を超えて言語類型的な問題に取り組み、この研究分野に貢献しているという点で価値がある。
3: やや遅れている
シダーマ語とクプサビニィ語の文法現象の理論的問題に取り組む論文の発表を行った。合計4回のフィールドワークで多くのデータを取ることができ、発表の準備と論文の執筆の過程でデータをまとめ、これらの言語の文法構造(特に情報構造)の理解をさらに深めることができた。特にシダーマ語は長年研究しているため運用能力が向上し、情報構造の現象の全体像を理解し、談話を聞き取りながらある程度は内容を把握できるまでになった。ところが、研究歴の浅いクプサビニィ語は、情報構造の現象の全体像を理解するまでに至っておらず、運用能力の向上も大きな課題である。
今まで通り、シダーマ語のフィールドワークをエチオピアのシダーマ・ゾーンで、クプサビニィ語のフィールドワークをウガンダのカプチョーワで行い、データをもとにして特に情報構造にかかわる現象の理論的問題を扱う論文を書き、できる限り国際的な場で発表する。両言語の運用能力を向上させることにより、多くの談話を聞きながら理解をし、情報構造についてもっと能率的に取り組むことができるようになる必要がある。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件)
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https://sites.google.com/site/kazuhirokawachi/