研究課題/領域番号 |
15H05159
|
研究機関 | 都留文科大学 |
研究代表者 |
伊香 俊哉 都留文科大学, 文学部, 教授 (80347369)
|
研究分担者 |
芝 健介 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00138140)
永井 均 広島市立大学, 付置研究所, 教授 (40347620)
内海 愛子 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (70203560)
林 博史 関東学院大学, 経済学部, 教授 (80180975)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 歴史学 / 現代史 / 戦犯裁判 / 戦争犯罪 |
研究実績の概要 |
各自の研究実績の概要は以下の通りである。 伊香俊哉:アメリカの知人からの依頼で中国における戦犯裁判についての原稿執筆依頼をうけて論考を執筆して提出した(未刊)。北京市档案館と天津市档案館、上海市档案館での史料調査を実施し、その調査結果も反映した論考を発表した。中国で刊行された120巻にわたる戦犯供述書の整理を進めた。 林博史:米国国立公文書館、ルーズベルト大統領図書館、英国国立公文書館、沖縄県公文書館、国立公文書館において、沖縄出身者の戦犯についての史料ならびに、対日協力者についての史料を収集した。これまでの調査によって、連合軍によって裁かれた沖縄出身の戦犯を特定し、訴追された戦争犯罪行為の概要が把握できた。 芝健介:ドイツ国立(連邦)公文書館およびケルン大学歴史文書館において、ニュルンベルク国際軍事裁判・ニュルンベルク継続裁判の史料調査・閲読をおこなった。それ以降の戦犯法廷にニュルンベルク裁判が及ぼした影響を検討するための史料蒐集にも努めた。またニュルンベルク国際軍事裁判の起訴状はじめまだ十分着手されていなかった基本資料の翻訳を進めた。 内海愛子:台湾人戦犯の全体像明らかにするために、オーストラリアの戦争博物館・国立公文書館等で収集した裁判記録・関連資料、日本の国立公文書館、外務省外交史料館等の史料をもとに名簿作成をおこなった。スガモプリズン関係史料(日記、手紙、所内誌、私家版書籍等)の整理、入力作業、資料修復をおこなった。 永井均:東京裁判のフィリピン判事の動向と歴史的役割について学会発表を基に論文にまとめた。フィリピンBC級戦犯裁判の事例研究として、ホセ・アバド・サントス事件を中心に調査を実施し、論考を発表した。同事件は日本占領下、最高裁判事だったホセ・アバド・サントスが日本への協力を拒み、殺害された事件で、戦犯裁判中、最もフィリピン社会の関心を集めたケースである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メンバー全員が、計画に沿った調査を日本国内及海外において着実に積み重ね、資料収集の実績を上げている。さらにその資料の整理を進め、その結果を反映した論考発表や学会発表を積み重ねている。
|
今後の研究の推進方策 |
各自の今年度の研究活動方針は以下の通りであり、また各自の研究を踏まえて、成果の発表も計画している。 伊香俊哉:引続き中国における憲兵の活動・国民政府による戦犯裁判に関する史料収集を北京市档案館・天津市档案館で進める。また中国で刊行された戦犯の自筆供述書の分析を行い、日本軍の戦争犯罪の実態と共産党政権による戦犯裁判の実態についての解明を進める。 林博史:前年度と同様の機関で、沖縄出身者の戦犯についての史料、また対日協力者として処罰された現地住民についての史料収集を継続する。以上を通して、大日本帝国支配地域における、本土人―沖縄人―朝鮮人・台湾人―チャモロ―現地の対日協力者というヒエラルヒーの中でのそれぞれの位置と特徴を戦犯・戦犯裁判という視角から分析する。 芝健介:引続きドイツ連邦共和国の国立公文書館およびバイエルン州公文書館において戦犯裁判関係史料の収集を継続しておこなうとともに、新たにゲッティンゲン大学公文書館での史料収集も実施する予定。戦犯裁判作用史の研究ならびにニュルンベルク史料翻訳の作業も引き続きおこない、年度内の発刊も視野に入れたい。 内海愛子:台湾人戦犯に関して台湾の中央研究院台湾史研究所での資料調査、聞きとりを行う。朝鮮人戦犯についても再調査し、植民地統治との関連で両者の相違と共通点を明らかにしていく。スガモプリズン関係史料の整理を引き続き行う。関連団体や個人資料、釈放関係資料などにより、スガモプリズンの視点から戦争責任の問題を調査する。 永井均:引続きフィリピンBC級戦犯裁判の事例研究としてホセ・アバド・サントス事件を中心にフィリピン現地での資料収集・インタビューを継続する予定である。これら資料調査、および資料分析を通して、フィリピン当局の戦犯裁判政策の特質、およびフィリピン国民の受け止め方、裁判計画全体の歴史的意味を考察する予定である。
|