研究課題/領域番号 |
15H05165
|
研究機関 | 天理大学 |
研究代表者 |
桑原 久男 天理大学, 文学部, 教授 (00234633)
|
研究分担者 |
日野 宏 天理大学, 公私立大学の部局等, 学芸員 (20421290)
巽 善信 天理大学, 公私立大学の部局等, 学芸員 (60441432)
長谷川 修一 立教大学, 文学部, 准教授 (70624609)
小田木 治太郎 天理大学, 文学部, 准教授 (90441435)
橋本 英将 天理大学, 文学部, 准教授 (80372168)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 考古学 / イスラエル / パレスチナ / 青銅器時代 / 鉄器時代 / 都市遺跡 / レヘシュ |
研究実績の概要 |
本研究は、古代の地中海東岸南部地域における後期青銅器時代(紀元前14~11世紀頃)~後期鉄器時代(紀元前7~6世紀頃)にかけての地域史を「地域考古学」、「聖書考古学」の協業を通して再構築することを目的とする。本年度は、イスラエル所在のレヘシュに関する既往の調査成果、天理参考館所蔵のテル・ゼロール出土資料と調査記録の検討を行い、その成果の一端は、天理参考館のスポット展示「2015年 7月8日~2017年2月6日」として公開を行った。 8月には、本研究の研究分担者ならびに研究協力者がイスラエルに渡航し、テル・レヘシュの発掘調査と考古学的サーベイを実施した。青銅器時代~初期鉄器時代の街並みや城門の存在が想定される「下の町」では、地中レーダ探査を行い、一部に強い反射のまとまりが幾何学的に配列しているようにみられる範囲を確認することができた。周壁や構造物などが存在する可能性も考えられ、将来の調査に向けた手掛かりを得られたことは大きな成果の一つであった。アクロポリスでは、後期鉄器時代(6~7世紀)の大型複合建築の構造と性格の解明をめざした調査区の設定を行ったが、要塞建築の南側を区切る周壁について、基底石の外側にこぶし大の石を埋め込み、さらにその外側には固くしまった土を土手状に積みあげる構築方法が確認できたことが特筆される。また、鉄器時代の大形複合建築の壁体に方向を合わせて、プラスターを貼った階段状遺構が存在するのが確認されたが、階段状遺構の上面から出土する土器はローマ期のものであり、遺構の時期をさらに追求する必要がある。このほか、大形複合建築の東縁付近でも建造物の配置状況を確認した 発掘調査成果の概要は、予備的なレポートをイスラエル考古局に提出し、西アジア発掘調査報告会において国内に向けた報告を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題によるイスラエル、テル・レヘシュ遺跡の発掘調査については、研究代表者・桑原が調査団長、研究分担者の長谷川修一が副団長となり、現地協力者であるイツハク・パズ博士(イスラエル考古局)との緊密な協力体制を取りながら実施しているが、現地の情勢も調査を行う上での問題はなく、各方面のさまざまな人々の協力のもと、概ね予定通り、順調に行われたと判断している。 本年度は新たな調査手法として地中レーダ探査も導入することができ、建築遺構の構造を解明するための調査区を設定する事前の調査として、予想以上に有効であることが確認されたことも意義があった。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度も、イスラエル、テル・レヘシュ遺跡の発掘調査を継続し、「地域考古学」の観点から、各時期の建築遺構や都市構造、物質文化を諸遺跡と比較研究してゆく。「聖書考古学」の観点からは、考古学データに照らして旧約聖書の記述を批判的に検討する。 とくに本研究課題が関心を寄せる後期鉄器時代の大形複合建築については、これまでの調査研究により、年代についてはアッシリア帝国末期~新バビロニア帝国時代という、古代イスラエルが西アジアの大帝国の支配下に組み込まれる時期に属するという大まかな見通しが得られている。しかし大型複合建物の全体像や性格についてはなお不明であり、年代についても検証を積み重ねてゆきたい。 今年度に新しく導入した地中レーダ探査の手法については、遺跡における都市構造を探るための補助的な方法として、今後も積極的に活用してゆきたい。 イスラエル考古局は各調査団に対し迅速な報告書刊行を強く要望しており、今後の課題と調査方針を明確化するためにも、並行して進めている報告書作成を加速してゆきたい。
|