研究課題/領域番号 |
15H05168
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
兼子 純 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (40375449)
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研究分担者 |
橋本 暁子 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (10715642)
山下 亜紀郎 筑波大学, 生命環境系, 助教 (60396794)
駒木 伸比古 愛知大学, 地域政策学部, 准教授 (60601044)
山元 貴継 中部大学, 人文学部, 准教授 (90387639)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 大韓民国 / 地方都市 / 商業機能 / 土地利用 / 都市構造モデル |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,低成長期における韓国の地方都市の変容を特に商業機能に着目して現地調査を実施するとともに,土地利用の分析を通じてその都市構造を解明し,地方都市再生に向けた都市構造モデルを開発することにある。平成28年度は平成27年度に慶尚南道梁山市の新旧中心市街地で実施した土地利用調査のデータベース化と,他地域の中心市街地を選定して,聞き取り調査や土地利用調査を実施した。 梁山市の土地利用調査のデータベース化においては,土地利用区画ごとの記録を表データにまとめ,地表部分および建物ごとの属性表として調査結果を整理しなおし,各行に固有の区画コードおよび建物コードを付す作業を行った。同時に,調査地域における地表部分の土地利用の区画および建物の敷地について,それぞれポリゴンタイプのGIS データを作成し,属性表と同じコードを付してテーブル結合できるようにした。以上の結果について,「韓国梁山市における新旧街地の土利用比較」と題して,GIS学会大会にて口頭発表した。 平成28年度の現地調査について,公州大学校の鄭還永教授のアドバイスの下,忠清南道公州市と扶余郡の都市活性化の動向に関する聞き取り調査を,両都市の行政担当者,商業活性化団体,現地事業者等に対して行った。公州市では済民川の改修に伴い,衰退していた地区のハード面での環境整備が進むとともに,カフェやゲストハウスと行った新しい観光客を惹きつける動きが確認された。扶余郡では,郊外地区に大型アウトレットモールができるなど,中心市街地を取り巻く環境は厳しいものがあり,いくつかの活性化への取り組みに進捗がみられない。しかし,中心市街地が世界遺産に認定されるなどの追い風もあり,新たな活性化への取り組みは依然として活発な状況にある。本研究では,両都市中心市街地の土地利用調査を実施して,それをデータベース化する作業を実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は,平成27年度に実施した慶尚南道梁山市での土地利用調査をデータベース化した。この作業では,同市の新旧中心市街地の土地利用について,土地利用や業種構成に着目して,旧市街地と新市街地の地域特性を比較分析すること目的とした。分析結果から新市街地では,肉料理屋や居酒屋,および若者向けの衣料品店や娯楽施設,カフェが多い 一方,旧市街地では,伝統的な食品店や衣料品店が卓越することなどが明らかになった。調査地域における地表部分の土地利用の区画および建物の敷地について,それぞれポリゴンタイプのGIS データを作成した。 上記の調査に加えて,平成28年度は他の地域および他のタイプの地方都市を調査することを目的として,忠清南道公州市と扶余郡に対する現地調査を7月と8月に実施した。両都市とも公州大学校の鄭還永教授の指導の下,扶余郡の副郡守と商業活性事業団への聞き取り調査を実施することができた。これらの聞き取り調査から,当該地域の地域特性と活性化への取り組みや課題等を把握した。 公州市でも同様に,行政担当者への聞き取り調査を実施し,特に旧市街地において衰退していた済民川周辺の活性化が進行していることが明らかとなった。これは河川とその周辺の改修というハード整備事業の他に,古民家再生を通じて賑わいを見せるカフェの存在が明らかとなった。こうした成功事例に続いて,周辺地域では同類の業種やゲストハウスの新設が顕著である。1月と2月の現地調査においては,これらの結果を明示するために両都市における土地利用調査を実施した。 平成28年度は現地調査とそのデータベース化に重点を置いたため,研究成果の公表が十分でないという状況であるため,次年度以降はこれらの成果を公表していく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度と28年度の研究では,公州大学校の鄭還永教授と仁川大学校の李虎相講師との連携の下,韓国の地方都市の現状と現地観察を実施することができた。両氏からのアドバイスと現地でのジェネラルサーベイを実施することにより,慶尚南道梁山市,忠清南道公州市と扶余郡での現地調査を実施し,それぞれの都市での土地利用調査を実施した。いずれの調査結果も,GISデータベース化を前提としてデータ整理を行っており,次年度以降に再調査を実施することにより,韓国の地方都市における土地利用変化を追跡することが可能になる。 また,これらの都市での聞き取り調査から,韓国の地方都市では多様な活性化への取り組みがスピーディに行われており,それらは失敗するものも多いが,上手く活性化が進んだ場合の速度は日本よりも速い。これらを定量的・定性的に捉えていくことが次年度以降の課題である。 平成29年度の実施計画について,平成28年度までの調査結果をまとめ,7月に開催予定の中四国都市学会大会において,「低成長期における韓国地方都市の挑戦」と題したシンポジウムを開催する。同シンポジウムの成果を,地理空間11巻3号に特集号として公刊予定である。 現地調査の予定として,平成27年度に実施した梁山市での土地利用からの変化を確認するために,再度土地両調査を実施する。前回構築したGISデータベースを基礎データとし,店舗の入れ替わり等の差分をデータ取得することで,商業地域しての動態を分析する予定である。加えて,本研究の視点に照らして韓国の都市制度を整理する必要があり,連携協力者から指導を仰ぐとともに,必要な資料を入手していく。
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