研究課題/領域番号 |
15H05171
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
関 恒樹 広島大学, 国際協力研究科, 准教授 (30346530)
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研究分担者 |
太田 和宏 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (00273748)
辰巳 頼子 清泉女子大学, 文学部, 准教授 (20407381)
東 賢太朗 名古屋大学, 文学研究科, 准教授 (40438320)
長坂 格 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (60314449)
日下 渉 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (80536590)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 社会的なもの / 社会政策 / 都市貧困 / 社会階層 / ミドルクラス / フィリピン / 農村社会 / 観光 |
研究実績の概要 |
本年度は、各メンバーによる、1か月前後の、フィリピンにおける集約的なフィールドワークが主な活動であった。関は、マニラ首都圏における非正規居住者のための再定住のための社会住宅プロジェクトに注目し、推進主体である、NGO団体と移転対象となる住民たちに対し、集約的なインタビューを行った。日下は、レイテ島アルブエラ町で調査を行った。調査地では、台風ヨランダの後、コプラ金融が破綻しマイクロファイナンスの浸透が進んだ。他方で、同町では麻薬王による超法規的処刑が相次いだが、ドゥテルテ政権によって麻薬王一族が逮捕・処刑された。これら二つが人びとの生活基盤に与えた影響について調査した。東は、フィリピン・ボラカイ島の過剰な観光化とそれに伴う環境破壊、「楽園」リゾートの崩壊過程における社会的なものの創出の可能性について調査研究を継続した。当初予想していた環境保全による対応もみられたが、他方でさらに観光開発を推し進めることにより積極的に連帯を推し進める動きもみられた。長坂は、2月にフィリピン、イロコス地方の農村地域において、条件付き現金給付の受給世帯10世帯にインタビューを実施した。調査からは、それら世帯が、親族である海外移住者からの支援、換金作物の仲買人からの借り入れ、村落内頼母子講、近隣のより裕福な世帯からの支援、マイクロクレジットなど複数の生計戦略を様々な形で組み合わせていることが明らかとなった。辰巳は、ミンダナオの紛争地域に自治区作る法律であるバンサモロ基本法(BBL)の立法過程に関する調査を行った。特に、NGOや市民運動家を含む多様なアクターは、この法律についてどう考えるのか。どのようにBangsamoroを定義し、そこにはどんな「社会的なるもの」が想像されているのか、インタビューを行った。太田は引き続き、福祉レジームミックスに関する理論的精緻化を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査地フィリピンのフィールドワーク、資料収集は概ね順調に進んだ。国内の研究会開催など、研究の進捗状況の共有も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
29年度は、本年度の集約的現地調査に基づき、補足調査を行う。そのうえで、海外研究協力者をも交えて2日間ほどの研究会を開催する。そこでは、収集した民族誌的データの発表、集約、各事例研究の進捗状況の把握、意見交換を行う。30年度は、研究成果の英文書籍としての出版を進める。30年6月に行われる予定のフィリピン研究全国フォーラム(東京・創価大)、11月に開催予定の国際会議であるPhilippine Studies Confrence in Japan 2018 (広島大学)などでパネル発表を行い、コメント、批判を広く集め、それに基づいて、出版のための最終原稿を完成させる。
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