民俗学の研究視角と調査手法をブラジル日系社会へと適用し、「日本」との関係のあり方を明らかにするという「研究の目的」にしたがい、交付申請書に記載したとおり、とくに具体的な文化表現の記録化に留意しつつ共同研究を遂行した。研究実施計画にある第1回研究会は4月27日に神奈川大学にて開催し、吉村竜「『日系コロニア』を創造する―ブラジル南東部における日本人移民の営農戦略とエスニシティー」の発表があった。第2回研究会は12月25日に同所にてシンポジウム形式で開催した。この「ブラジル日本人入植地の歴史と民俗」では、以下の発表があった。角南聡一郎「墓からみた日系移民のエスニシティ―レジストロ市サウダーデ墓地の場合」、泉水英計「日系移民の出自としての日本語学校『同窓会』、永井美穂「ブラジル日系社会の歴史を伝える手段―イグアッペとレジストロにおける博物館の可能性」、森武麿「ブラジル移民から満洲移民へ―信濃海外協会を対象として」、須崎文代「レジストロにおける戦前期竣工の日系移民住宅について」、田中和幸「現地調査にみる日系移民住宅の架構形状について」。本共同研究全体の最後の研究会という位置付けを考慮し、実施計画のとおりブラジル在住者を招聘した。本共同研究の主要な調査地であるサンパウロ州レジストロ入植地について郷土史研究の視点からおこなわれたこの講演は、福澤一興「ようこそレジストロ日伯文化協会へ―過去・現在・FUTURO」とルーベンス清水「日本人植民地のレジストロへの影響」であった。さらに、米田誠士による「空からレジストロを見てみよう」と題したドローン動画の上映もおもなわれた。このシンポジウムの発表者は、発表原稿を整理して『比較民俗研究』誌に寄稿し、ブラジル特集として出版された。その他に、建築班は6月23日に日本建築学会にて調査報告をおこない、8月中に1名がレジストロにて補足調査をおこなった。
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