研究課題/領域番号 |
15H05174
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
森 明子 国立民族学博物館, 民族文化研究部, 教授 (00202359)
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研究分担者 |
天田 城介 中央大学, 文学部, 教授 (70328988)
内藤 直樹 徳島大学, その他の研究科, 准教授 (70467421)
高橋 絵里香 千葉大学, 文学部, 准教授 (90706912)
岡部 真由美 中京大学, 現代社会学部, 准教授 (40595477)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 文化人類学 / ケア / 国際研究者交流 / 多国籍 / 民族誌 |
研究実績の概要 |
本年度は、国家やコミュニティの境界領域におかれた人々は、いかに持続的なケアを実現しているのか明らかにするために、ケアが発動する局面を詳細に検討し、多様なアクターを射程におさめてデータを収集することをめざした。
1.代表者森は、再統一後のベルリンの保育園運営について調査し、社会福祉団体、自治体、保育士、父兄の関わりを検討した。また、ウィーンで、ベビーシッターを結節点としてあらわれている保育ネットワークを調査した。2.天田は、介護保険制度によるケア労働市場の形成・再編成に注目し、さらにそれが家族関係に与える影響について、日本と韓国で調査した。3.内藤は、ケニア北部で、近年導入されたICTを活用した食料援助システムに注目し、牧畜社会の集団主義的な食糧獲得戦略に起こりつつある変容を調査した。4.高橋は、フィンランドの高齢者福祉において、親族介護と行政によるそれへの支援、施設介護の現状について調査した。5.岡部は、ミャンマーからタイ北部に流れてきて仏教寺院に居住するシャン人労働者に注目し、寺院が移住初期の生活を保障している実態を調査した。6.岩佐は、ラオスのヴィエンチャンにおいて、高齢者福祉のとりくみ状況を調査した。7.浜田は、ガーナ南部の農村地帯で、地縁的ネットワークと血縁的なネットワークが、どのように発現するか調査した。
また、ラウンド・テーブル「東アジアにおける家族の境界とケア実践―社会政策のもとでの家族」を、2015年10月12日に国立民族学博物館で開催し、ケアの実践について比較研究の視点から議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ケアの実態をネットワークという視点からとらえるために、ケアのあり方についての通時的な変遷と、ケアの担い手の臨機応変の代替可能性を考慮し、実際にケアを担う多様なアクター――家族、親族、隣人、自治体、社会福祉団体、ケアワーカー市場等――についてのデータを収集した。メンバー各自の調査において、注目すべき局面が明らかになってきている。次年度における調査において、この方向をすすめて、それぞれの局面で多様なアクターがいかに連関するか、その実態を描きだしていくことが、有効であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画どおり、ケアの実態把握と、そこでのネットワークのあり方を明らかにするべく、調査を続行する。とくに、ローカルなケアの実践において、多様なアクターが連関することで、どのような新たな関係性があらわれつつあるのか、そこから、人々のどのような社会像を読み取ることができるか、ということに注目していく。 また、海外研究者数名をまじえてワークショップを開催し、集中的な議論を行う。ワークショップを通して、各自のデータを比較検討し、理論的な展開をはかるとともに、国際的な研究者ネットワークを拡大・発展させることをめざす。
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