研究課題/領域番号 |
15H05179
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 綾 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (20537138)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 経済政策 / ミクロ経済分析 / 産業発展 / 食品安全規制 / 貧困削減 |
研究実績の概要 |
先進国消費者の安全意識の高まりを背景に食品安全基準が引き上げられているが、発展途上国からの輸出品が先進国の基準に満たず、港での検査で入国拒否される事例は後を絶たない。生産者が規制に対応できなければ生産の縮小、ひいては貿易の縮小につながりかねない。そのような背景を踏まえ、本研究は、どのようにしたら安全基準に見合う生産方法の導入を促せるのかを探るため、ベトナムのエビ養殖産業を事例に、無作為化比較試験(RCT)を用いた社会実験を行い、それぞれの効果を定量的に分析するものである。 H28年度の活動としては、H27年度に行った社会実験の効果を測定するため、エビ養殖農家に対する再調査をインタビュー形式で行い、併せてエビの残留農薬検査を行った。調査には、現地の貿易大学経済学部、カントー大学水産学部の協力を得た。 更に、良いプラクティスを拡散させるために社会ネットワークが果たす役割を分析するため、新たな社会実験を行った。具体的には、これまでより対象地域を広げ、新たな農家群を4グループに区分し、全グループに対して調査を行うとともに、内3グループに対して水質検査キットと記録用紙の配布を行った。グループ毎に、対象者をランダム抽出、社会ネットワークの度数を考慮した抽出、地理的な距離を考慮した抽出と異なる方法で選出し、使用方法を説明した。今後、スピルオーバーも含めた介入の効果を計測し、抽出方法の違いで効果に違いが出るのかを分析する計画である。 また、ベトナム及びタイで行われた国際的な学会に参加し、ベースラインデータを使った分析を基に、これまでの成果を対外的に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H28年度に行った活動の内、エビの残留農薬検査は予定していた農家の35%ほどしか採取できなかったため、進捗は計画よりやや遅れている。これは、対象農家側の理由によるもので、検査を委託したベトナムのカントー大学のチームが全農家を訪問したところ、養殖したエビが病死してしまったり、その時点で養殖していなかったり、エビ養殖から撤退していた等の理由から、全サンプルを採取することができなかったためである。撤退した農家以外に関しては、時間をおけば採取できるため、H29年度に実施したい。それ以外の計画は概ね順調に進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度は、残り分の残留農薬検査と社会ネットワークの社会実験の効果を測定するためのポストプログラム調査を実施する計画である。また、価格インセンティブ実験の支払いも行い、その効果を計測する。最終年度であるため、これまで収集したデータを用いてそれぞれの介入の効果を比較し、学術論文の形にまとめ、研究成果を対外的に発表していく計画である。
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