先進国消費者の安全意識の高まりを背景に食品安全基準が引き上げられているが、発展途上国からの輸出品が先進国の基準に満たず、港での検査で入国拒否される事例は後を絶たない。生産者が規制に対応できなければ生産の縮小、ひいては貿易の縮小につながりかねない。そのような背景を踏まえ、本研究は、どのようにしたら安全基準に見合う生産方法の導入を促せるのかを探るため、ベトナムのエビ養殖産業を事例に、無作為化比較試験(RCT)を用いた社会実験を行い、それぞれの効果を定量的に分析するものである。 H29年度の活動としては、H28年度に行ったエビの残留農薬検査の残りの農家分を行った。検査の実施には、昨年同様、カントー大学水産学部の協力を得た。さらに、H28年度に実施した社会実験の効果を分析するために、エビ養殖農家に対する再調査をインタビュー形式で行った。これには、現地の貿易大学経済学部の協力を得た。 さらに、H28年度に実施したRCT(具体的には、質の高いエビに対する価格インセンティブの提示)のフォローアップとして、残留農薬検査で合格となった農家に、価格プレミアムの提供を行った。これには、現地の農業農村開発省の協力を得てワークショップを開催した。 その後は、収集したデータを分析、論文執筆を行った。一本の論文は国際学術誌に掲載され、もう一本の論文は、国際的な学会で二回発表を行った。更にもう一本の論文は、H30年度に米国で行われる国際的な学会での口頭発表が決まっている。また、英文著書の発行が決定し、H30年度に出版予定である。
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