研究課題/領域番号 |
15H05180
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松原 隆一郎 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (90181750)
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研究分担者 |
中西 徹 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (30227839)
矢坂 雅充 東京大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (90191098)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 有機農業 / 流通システム / 産消提携 / 社会ネットワーク / イタリア / ドイツ / メキシコ / フィリピン |
研究実績の概要 |
(1)イタリア,ドイツおよびスペインにおける有機農産物の流通市場における実態調査によって,本研究の比較対象軸を定め,(2)有機農業の生産過程における社会ネットワークと各地域における有機農産物市場の諸条件を検討し,新しい基本仮説を導いた。 欧州にあって最大規模の有機農業耕作地面積を有するイタリアでは,その消費市場は調査地ミラノ市が立地する北部に偏っている。イタリアの有機農業は,国内の地域内市場を重視しつつも,国際市場をも見据えた複眼的な市場戦略によって発展してきたという作業仮説を,生産者および流通業者への面接調査によって確認,傍証することができた。他方,ドイツは,有機農業について,世界において最も先進的であり,demeter認証基準や国際有機農業推進連盟(IFOAM)ほか有機農業発展の推進力となってきた経緯をもち,欧州最大規模の有機市場を有している。 スペインは,これら2国の中間にあたり,近年,急激に,生産および消費を拡大してきたが,他方において,その対局にある遺伝子組換えトウモロコシの商業栽培を行っているという複雑な国内事情がある。この点でスペインは,フィリピンやメキシコと共通性を有している。 以上の事実発見をふまえ,EUを「一国」として捉えるとき,アジアやラテンアメリカ地域への適用を考える際に,グローバル化が進む国際市場の中での域内分業を軸とする新たな有機農業の市場戦略を提案することができるように思われる。 本年度の実態調査によって得られた以上の仮説については,矢坂(2015),中西(2015),Nakanishi(2015), Ukeda(2015)が予備的考察を展開している。また,松原は,これらの議論に,自治体の環境政策の原理を導入すべく,政府と環境についての考察を深め,来年度以降の発展のための準備を行い(松原:2015),今後の研究の方向性を定めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
欧州(イタリア,スペイン,ドイツ)を中心とする実態調査によって,有機農業における域内分業の他地域への適用可能性について,研究計画における仮説の発展を導き,その際の地方自治体の役割の重要性について理解を深めたことは,大きな発展であった。ただし,流通面における社会ネットワークについては,生産面における情報と比較し,より調査を進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
グローバル化に伴う国際有機農産物市場と域内分業における国内市場の関係,なかんずく地方自治体による政策の重要性に配慮した「市場戦略」を見出すという方向性を確認することができた。今後の社会ネットワークに着目した調査も,その延長線上で行うことが望ましいであろう。
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