研究課題/領域番号 |
15H05180
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松原 隆一郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (90181750)
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研究分担者 |
中西 徹 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30227839)
矢坂 雅充 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 准教授 (90191098)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 有機農業 / イタリア / フィリピン / 参加型有機認証制度 / 市場戦略 |
研究実績の概要 |
イタリアのシチリア島における取り組みの先進性に鑑み,本年度は,まず,日本の提携ととは異なる固有のシステムを有するイタリア中部・南部の有機農業における市場戦略において,生産者,流通両面の取り組みについて,新しい共通認識の下,有機農産物の在庫管理,需給調整,価格決定,販売量,販売額などのデータを収集し,日本とフィリピンの国際比較を行った。 まず,イタリアについては,マルケ州のイゾラ・デル・ピアーノ,シチリア島カターニャとパレルモにおける計9箇所の生産者,流通業者および小売り業者を訪れ,インタビューを行った。この場合の新しい発見は,基本的な哲学を共有しながらも独立した経営方針(社会事業とのリンク,自然農法,技術開発,海外輸出中心など)にもとづく戦略を採っており,他方で,関係者相互が連携し,情報を共有している点である。 日本においても,従来は「産消提携」志向型が代表的であったが,市場志向型に向かう生産者も増えている点で,それは重要な示唆を有する。その代表例が,北海道の有機酪農である。「イタリア・モデル」の意義を検討するために,はじめて調査を行った2011年以来の5年間の変容について詳細なデータを収集した。同様な性向は,フィリピンについても観察されるものの,それは,主としてNGO主導によるものである。遺伝子組換え種への対応が地方レベルに任されていることも影響しているものの,参加型有機認証制度(Participatory Guarantee System)が普及している地域においては,州内の情報共有システムが生まれ,局地的市場圏(Local Market Area)の発展の萌芽に結びついているという観察を得ることができた。そこで,生産者,流通業者および消費者間の社会ネットワークを通じた技術や情報の伝播過程に着目し,その経緯と発展の可能性について分析をフィリピンについて展開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
治安上の問題から,フィリピンについては,研究分担者の中西のみが調査を行うことになり,包括的な調査ができなかった。なお,この問題については,研究分担者中西が平成29年度において解決できるように準備を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,有機農産物の巧妙な市場戦略を有していると考えられる「イタリア・モデル」の適応可能性について,各調査対象地域の詳細な調査結果によって再検討する。その際,平成28年度に参画者全員による包括的調査が治安上の問題からできなかったフィリピンについては,研究分担者中西が十分な準備を行い,これまで行った調査結果の補足と同時に,包括的な調査を実施し,イタリア,日本およびフィリピンの間の比較研究を実現したい。
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