研究実績の概要 |
主な調査地である北タイ、チェンマイの退職移動者に対して、継続的に帰国者にライフコース、移動のメリット・デメリット、帰国理由等について、インタビューを行った。そして、フィリピンについては2018年12月末から2019年1月はじめにダバオ等で聞き取り調査を行った。セブ、マニラにおいては、関係機関や邦人団体に対して、日本からの退職者の動向について聞き取った。 社会現象としての国際退職移動は、ロングステイの第一世代が後期高齢人口に突入した時点で衰退期を迎えている。日本に拠点をおいた海外の温暖な地域への避寒の季節移動(年に1ヵ月~3ヵ月)も2010年前後と比べるとその勢いはない。この背景には、退職年齢や年金の支給年齢の上昇による、国民健康保険の海外使用の厚労省の抑制があり、また個別的な要因としてはフィリピンでの主な邦人退職者の滞在先であったダバオの治安問題(日本外務省の不要不急の渡航警告の継続)やタイでのビザの厳格化といったことがある。他方、これらの地域への退職移動は、物価の安い温暖な地域での経済合理性(money and sun)という古典的な枠組みだけでなく、親密性の確保の要因が大きい。個別の目的(結婚、社交、諸活動への参加)での移動はいまでも顕著に観察されている。この点については、"Intimacy Seekers: Retired Japanese in Chiang Mai"の演題で国際会議(5thMMC Regional Conference, 8-9 November 2018 at IPSR, Mahidol University,Thailand)で発表した。
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