研究実績の概要 |
本年度の研究実施計画にしたがい、前半期は勤務校のサバティカル研修を利用してトロントを拠点とした資料調査を集中的に進めた。後半期には台湾での補足的調査を行うとともに、収集した資料の読解および成果のとりまとめを進めた。その概要は以下のとおり。 (1)ノックス大学図書館等にてカナダ長老教会の会議録や宣教師文書の通覧を継続した。王立オンタリオ博物館(ROM)所蔵資料のうちアジア地域の写真記録や文物を通覧し、デジタル撮影と整理・分析を進めた。また、トロント大学図書館にてカナダ・英国発行の主要新聞(The Globe, Toronto Daily Star ほか)の通覧を進めた。いずれも19世紀半ばから20世紀の時期を調査対象とした。 当初の見通しとは異なりROMの写真コレクション中に台湾先住民族に直接関わるものは乏しいことがわかったが、中国、朝鮮、日本を活動拠点とした宣教師の膨大な個人コレクションを通覧することで、教会アーカイブズの特徴も逆に浮かび上がってきた。また、宣教師文書、宣教師が持ち帰ったモノ、新聞記事を並行して閲覧したことにより、アジアでの宣教活動とその情報の還流が同時代のカナダ社会においてもつ意味合いについて新たな視点を得ることができた。 (2)台湾の桃園および新竹にて、20世紀初頭に初等後教育機関に就学した先住民の出生地・活動地域・墓所などをたどり、縁戚者や地元の住民に聞き取りを行った。カナダ長老教会の運営した淡水神学校・中学・女学校への就学者の足跡については基礎的事実の確定が難航しており、聞き取りを含めて継続課題とせざるを得ない。 (3)収集した資料は、それぞれ概要を把握したうえで詳細な資料目録の作成を進めた。このうち重要な資料については翻刻に着手している。また、これまでに得られた知見の一部は国際シンポジウム(於台南、2019年5月)等で発表予定である。
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