研究課題/領域番号 |
15H05199
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
森下 稔 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (60300498)
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研究分担者 |
鈴木 康郎 高知県立大学, その他の研究科, 准教授 (10344847)
平田 利文 大分大学, 教育学部, 教授 (20173239)
S Kampeeraparb 名古屋大学, 国際開発研究科, 講師 (90362219)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 教育学 / 比較教育 / 大メコン圏 / 基礎教育 / ASEAN統合 |
研究実績の概要 |
本研究では、2015年末に創設されたASEAN共同体が、大メコン圏諸国における基礎教育に、どのようなインパクトを与えているかを明らかにすることを目的とし、具体的には、各国の基礎教育カリキュラムの現状および改革動向、ASEAN共同体・ASEAN諸国に関する学習内容、GMS域内の教育交流・協力について現地調査によって解明する。本研究では、現地の海外共同研究者の協力を得て調査を実施するとともに、現状と課題を共有することを目指している。 基礎教育カリキュラムの現状および改革動向、ASEAN学習の内容については、各国で多様な展開が見いだされた。タイではASEAN統合のインパクトが非常に大きく、2010年には3年間の「Spirit of ASEANプロジェクト」が着手され、ASEAN学習のモデル校が指定されて教材や学習環境が整備され、後に全国の学校に展開されていった。また、ASEAN事務局が開発した「ASEANカリキュラムソースブック」に準拠した教科書も開発されている。ラオスでは、ASEAN学習が一部の教科に取り入れられるようになったが、最も大きなインパクトは、ASEAN共通語としての英語教育を重視する方針転換に表れており、同時に教育の質向上が喫緊の課題となっていることが明らかになった。ミャンマーでは、ASEAN統合に時期を合わせ、2015年に基礎教育段階のカリキュラム・フレームワークが開発されていることが明らかになった。 また、教育交流・協力については、特に、タイの東北部における基幹的な大学であるコンケン大学がラオスなどのGMS諸国の教員を対象とした研修を行っている事例、ラオスとの国境に位置するウボンラーチャーターニー大学ムクダハン校の事例を明らかにできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、当年度中にタイ、ラオス、ミャンマーにおいて調査を実施できた。ただし、連携研究者の事情により、カンボジアにおける調査を次年度に延期した。そのため、繰り越しを行った。まず、7月に打合せ会議を開催し、研究目的、研究計画・方法について確認した上で、各メンバーがこれまでの研究で蓄積させてきた知見や情報を発表した。また、調査研究のための枠組みを構築し、調査計画を立案した。それに基づいて、上記調査を実施した。また、東南アジア教育大臣機構が主催してバンコクで開催されたThe International Conference on Special Educationに参加し、東南アジア諸国が教育問題に協力して取り組み、政策提言を構築する現場を観察した。 研究成果の発信については、本研究の基盤となった過去の研究成果および本研究による研究成果の一部を海外ではComparative Education Society of Asiaにおいて、国内では日本比較教育学会および九州教育学会において発表した。また、 当年度末にはホームページをウェブ上に開設し、研究成果を社会に発信した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、GMS諸国の基礎教育カリキュラムおよびASEAN統合に関する文献・資料の収集・整理・分析を引き続き充実させて、研究の深化をはかる。また、共同研究者それぞれが個別にもつ情報を集約・統合するため、研究会を開催する。 現地調査については、未調査となっているカンボジアおよびベトナムについて実施するとともに、ASEAN学習が活発なタイの国境地域において、引き続き多様な事例を調査する。ASEAN諸国に大きな影響をもちつつある中国についても動向を把握することに努める。 研究成果については、国内外の学会で積極的に発表するとともに、論文執筆を行うとともに、当年度に開設したホームページにより、広く社会に発信する。 現地への研究成果還元を目指して、最終年度にワークショップ開催を企画する。
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