研究課題/領域番号 |
15H05202
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
寺下 太郎 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (90314971)
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研究分担者 |
大石 康彦 国立研究開発法人森林総合研究所, 多摩総合科学園, 教育的資源研究グループ長 (80353605)
井上 真理子 国立研究開発法人森林総合研究所, 多摩総合科学園, 主任研究員 (30414478)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 林業教育 / 森林教育 / 林野制度 / ドイツ林業 / デュアルシステム / 林業研修センター / 森林・林業教育ブログラム |
研究実績の概要 |
前年度に調査した結果を分析することに重点を置いて活動を行なった。ドイツにおいては林業教育のための制度が各州ごとに整備されており、地域の特性に即した研修制度が確立している。各州にある研修センターと林業事業体とが協力して、理論と実践を教え込むデュアルシステムという形は各州で共通している。また、その技術に関する基礎理論については全ドイツで統一されたテキストが使用されており、林業機械や装備、労働安全に関わるチェックは全ドイツの中に一つある機関が統一された基準に基づいて行なっている。この、全国的に統一されている研修の枠組みと、それぞれの地域の特性に即した内容との組み合わせにより、実践的な林業教育が行われ、また、その認定制度も信頼性の高いものとなっている。上述した研修センターは、林業技能者の育成だけでなく、さまざまなプログラムを提供している。たとえば森林教育など、狭義の林業作業では取り扱っていなかったこと、森林生態系に関する新しい研究成果、林業事業体にとって知っておくべき法令の新たな動向など、ブラッスアップの機会を提供している。 また、日本での林業教育について、専門教育にかかわる諸機関の実態も明らかになってきた。近年新設が続く林業大学校であるが、既存の制度である専門高校での教育、高卒後の「緑の雇用」制度における研修、さらに大学の農学部での森林科学関係の学科といったさまざまな教育・研修施設との役割分担がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画ではドイツ・オーストリアを中心にさらなる現地調査を行う予定であった。ドイツ調査はある程度進展を見たが、テロ事件の発生により、現地調査遂行に関して安全が確保できない状況となった。現地専門家とのコンタクトを密に取りつつ、現地に行かなくても入手できる資料についての分析を中心に行なった。そのため、旅費として計上していた予算を次年度に繰り越した。また、オーストリアについては、文献調査にとどまった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きドイツ・オーストリア・スイスの現地調査を行うべく、カウンターパートとのコンタクトを継続し、また、文献調査を深めていく。その際の重点となるのは、国ごとの共通点と相違点を明らかにしていくことである。隣接している国々であるため、自然条件はある程度のグラデーションを持ちつつ比較していくことになるが、社会条件は自然条件以上に違いがあると予想される。同じ用語を用いつつその内容が大きく異なるということは文献調査の段階でも判明しているため、その差異が歴史的にどのように生じたのか、それぞれの国における林業の位置付けを明らかにしつつ研究分析を行っていく。 他方、日本の林業教育制度についても、フォレスターやプランナーなど、林野行政に関する職種が新たに制定され、その実効性や、そうした人材を育成していくために必要な制度が考察される必要があり、こうした新たな状況を俯瞰しながら、林業教育制度の全体像を分析・考察していく。
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