研究課題/領域番号 |
15H05204
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
眞城 知己 千葉大学, 教育学部, 教授 (00243345)
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研究分担者 |
石田 祥代 東京成徳大学, 応用心理学部, 教授(移行) (30337852)
是永 かな子 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 准教授 (90380302)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | インクルーシヴ教育 / 自治体再編 / デンマーク |
研究実績の概要 |
28年度は14カ所の自治体を訪問し、各市において教育行政担当者を中心に調査を実施した。 本年度の研究において得られた最も重要な知見は、自治体再編後のデンマークにおいて各自治体の裁量が拡大した状況下では、政府が提示したインクルーシヴ教育推進の具体的数値目標を達成するために、特別学校を廃止してこれを目指した自治体もある一方で、反対に特別学校が存在しなかった自治体において特別学校を新設して目標達成を図ろうとした自治体もあるということであった。つまり、インクルーシヴ教育に関わる教育制度は、学校種や学級種という次元とは異なる新しい視点から捉え直すことが可能であり、また、そこに次代のインクルーシヴ教育の姿を模索する端緒を得たと考えられるのである。 特に、特別学校を新設しつつインクルーシヴ教育の推進を図ろうとした自治体では、特別学校の役割を明確に限定するとともに、在籍生徒数が減少した通常学校において複数担任制を導入しつつ、教師を特別学校に配分して特に集中的な指導が必要な生徒への対応も提供できるようにして、市内全体で学校の機能を高める方策が適切にかみ合う仕組みを創設していた。 この知見は、従来より、インクルーシヴ教育推進のためには特別学校の廃止が不可欠の要素であるかのように論じられることが多い日本での感覚からすると大変興味深い結果であった。表面的には特別学校の廃止と新設という、全く正反対の制度設計のようにもみえるが、「学校における教育の質を全体的に高めること」という考え方が双方に共通して置かれていたのであった。 29年度以降には、特に社会資源が十分ではない自治体や、都市部にあって財政状態が思わしくない自治体などを対象にフィールド調査を継続して、さらなる知見を得られるようにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、デンマーク政府のパイロットスタディに参加した自治体以外への調査を実施したが、パイロットスタディに参加した自治体ほどに体制が整っていないことから、訪問調査の了解が得られにくかったことと、シリア難民受け入れが各自治体に強制的に割り当てられたことに伴う学校への受け入れに伴う混乱が大きかったために、調査への協力時期を延期してほしいとの回答がいくつもの自治体から寄せられ、フィールド調査の進行にやや遅れが生じている。現時点では、29年度以降に訪問する予定であった自治体への調査依頼を前倒しするなどして、遅れの幅を最小限にするように努めている。
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今後の研究の推進方策 |
残りの2年間で都市部と地方部における調査を進めるが、すでに訪問した自治体の関係者の協力を得ながら、効率的に調査を進め、目標とする全自治体の調査を終えたいと考えている。
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