研究課題/領域番号 |
15H05205
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
福田 洋一 京都大学, 理学研究科, 教授 (30133854)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 絶対重力測定 / 重力変化 / テクトニクス / ニュージーランド / カイコウラ地震 / 地殻変動 |
研究実績の概要 |
本研究の当初の目的は、ニュージーランド(NZ)・南アルプスで絶対重力計(AG: Absolute Gravimeter)および相対重力計による測定を実施し、NZ南島でのトランスフォーム断層の横ずれ運動と南アルプスの隆起の関係やその変動メカニズムを解明すること、またクライストチャーチの重力基準点や北島での新設・既設重力点でAG測定を実施することで、NZでのAG基準点網の強化・拡充を行うことであった。本研究の立案後、H26~27年にNZでの新たなAG測定が実施され、南アルプスでの重力変化が当初予想より小さいことが判明した。これを受けH27年度には実施計画を一部修正し、NZでの最新の測定結果との比較や新たな測定点の追加に重点を置き、当初計画の測定点に加え、タウポ、ダニーデンでのAG測定も実施した。H28年度には、これらの結果について国内外の学会等で発表するとともに、論文にまとめた。 さらに、H28年度には、南アルプスの山岳地帯でヘリコプターを利用した測定を中心に、2台の相対重力計を用いた観測を実施し、H27に得られた結果の検証を行った。また、H28年11月には、NZ南島のカイコウラ地域でM7.8の地震に伴う大規模な地殻変動が発生し、最大10mにもおよぶ地殻の隆起が観測された。この地域は南アルプスの成因とも密接に関係した地域であり、NZの研究協力者とも検討を行った結果、同地区での重力測定を実施することはテクトニクスの研究にとって重要であると判断し、H28年度の測定として、急遽、同地区での相対測定を追加実施し、その結果、数100μGalにおよぶ明瞭な重力変化を検出した。これらの成果は次年度研究につながるものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、当初、長年実施されていなかったNZ南アルプスや北島でのAG測定を実施することで、NZでのテクトニクスならびにAG測定に関する研究に大きく寄与することを狙っていた。しかしながら、H26年末~H27年にかけ、オーストラリアならびに米国によりNZでの新たなAG測定が実施されたことで、H27年度の研究方針を一部変更し、これらの測定データ検証や拡充を目的とした測定も実施した。得られた結果は、前年の測定結果と矛盾するものではなく、さらに、重力変化の傾向として新たな知見も得られており、これらは、国内外の学会で発表するとともに論文として成果を公表した。さらに、H28年度に発生したカイコウラ地震地域での重力測定を実施したことで、ニュージーランドの研究者との協力関係も含め、新しい研究の方向性が見出された。従って、研究の進捗状況としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画では、H30年1~3月頃にNZでの2回目のAG測定を実施し、前回測定値との比較により、重力の時間変化についての検討を行うとともに、重力基準点網の拡充を図る予定であった。一方、H28年11月に発生したカイコウラ地域での地震により、急遽、同地域で実施した相対重力測定では、数100μGalにおよぶ明瞭な重力変化が検出できた。このため、NZの研究協力者からも、同地域でのできるだけ早期のAG測定の実施が強く望まれたことから、H29年に同地域で新たに絶対重力測定を実施した。しかしながら、その際は絶対重力計の機会的なトラブルで十分なデータが得られなったことから、H30年度に同地域で再度AG測定を実施する予定である。再測定では、H29年度の測定点を含むことから、もし地震の余効変動に伴う重力変化が検出されれば、地下の粘弾性的性質を知る貴重な情報を得ることが期待される。 本研究期間中には、さらに多くの測定を実施することは困難なため、H30年度には、カイコウラ地域でのAG測定に加え、将来の基準点として北島のWellington近郊での複数のAG測定を実施する予定である。 以上と並行して、連携研究者やNZの研究者を含めて研究協力者との研究打合せ等を実施し、これまでの測定データの解析を進めるとともに、得られた成果について、国内外の学会での発表や、論文化にも努める。
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