研究課題
2016年カイコウラ地震(Mw7.8)の震源付近における4点の臨時観測を含めて、南島北部において50カ所の地震観測を継続した。得られた地震データをニュージーランドの定常地震観測網であるGeoNetデータと統合して解析を行い、カイコウラ地震の詳細な余震分布や、余震域とその周辺における応力場とその地震前後の変化を推定した。カイコウラ地震は観測史上で最も複雑な地震と言われているが、詳細な余震分布は、この地震で活動した断層を特定する上で極めて重要である。この地震は内陸プレート内の地震であると考えられているが、近接する沈み込み帯のプレート境界でも地震すべりが起こったという指摘もある。また、カイコウラ地震の発生後にプレート境界でスロースリップが起こったことも報告されており、プレート境界における様々な変動との関係を明らかにする上でも余震分布は重要である。隣接した断層が活動するだけではなく、断層が次々と「飛び火」して活動した可能性も指摘されており、各断層周辺の地震前後の応力場の推定は極めて重要であるが、地震前から長期間にわたって稠密臨時地震を続けてきたために、地震までの応力場の推定も可能となった。南島北部全体においては、広域における地震波速度トモグラフィー解析を進め、低速度域やVp/Vs比の異常域を精度良く検出することが出来た。沈み込むプレート境界から、アルパイン断層の西側の逆断層地帯にある、1929年のマーチソン地震(M7.8)で活動したWhite Creek 断層付近へ続く低速度異常が顕著であり、既存のMT観測による低比抵抗異常とも調和的であることが分かった。このことは、最上部マントルから地殻深部において間隙流体が不均質に分布しており、沈み込むプレートから放出された水が地殻深部に達して内陸大地震を引き起こしている可能性を強く示唆している。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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