研究課題
深海における地磁気観測から得られる地磁気異常を利用することで、海洋底の磁化の記録から、地磁気の逆転より詳細な古地磁気変動を読み取ることが本研究の目的である。具体的には、設定した調査海域において海上および深海における地磁気観測を実施し、得られた地磁気観測データを解析して、海洋底の磁化変化を推定する。本年度の最も大きな実績は、調査海域3(インド洋、スリランカの南の海域)での観測を、H29年7~8月にドイツの研究船「Sonne」による調査航海により実施できたことである。観測のために、日本から船上3成分磁力計を準備してこの調査航海に持ち込み、ドイツの観測機器も利用することで、海上での地磁気観測データを取得した。この調査海域3は、インド洋で白亜紀スーパークロンの時期に形成された海洋底が存在する海域であり、観測により得られた地磁気観測データの解析を進めることで、地磁気異常データから白亜紀スーパークロンにおける古地磁気変動の抽出を試みる予定である。調査海域1(インド洋、マリーセレストトランスフォーム断層とアルゴトランスフォーム断層を含む海域)で得られたデータの解析結果の一部と、調査海域2(インド洋、マダガスカル島の南の海域)での調査概要と初期解析の結果については、関連学会で公表した。調査海域2は、インド洋で白亜紀スーパークロンの時期に形成された海洋底が存在する海域であるが、比較的大きな振幅を持つ地磁気異常が観測されている。マリアナトラフ背弧海盆での新たな調査を、国立研究開発法人海洋研究開発機構の研究船利用公募課題として提案したが、残念ながら不採択であった。
2: おおむね順調に進展している
本研究の研究期間中に3カ所の海域での調査航海により観測データの取得を計画していたが、今年度にマリアナトラフ背弧海盆の替わりに新たに設定した調査海域3(インド洋、スリランカの南の海域)での調査を実施することができ、調査では海上での地磁気観測データを取得できたからである。このデータの解析を始めている。また、調査海域1(インド洋、マリーセレストトランスフォーム断層とアルゴトランスフォーム断層を含む海域)および調査海域2(インド洋、マダガスカル島の南の海域)での観測により得られた観測データの解析を進め一部結果についての公表も行った。なお、当初3つ目の調査海域として設定していたマリアナトラフ背弧海盆での調査航海を、国立研究開発法人海洋研究開発機構の研究船利用公募課題として提案したが、公募航海日数が大幅に減少していることもあり採択されなかった。これに対しては、これまですでに3カ所の調査海域での調査航海を行っているため、これらの航海で得られた観測データの解析を中心にして研究を進めている。
今後の研究では、1)調査海域1(インド洋、マリーセレストトランスフォーム断層とアルゴトランスフォーム断層を含む海域)と他のフラクチャー断層により得られた地磁気観測データの解析結果の比較、2)研究手法の確立、3)調査海域2(インド洋、マダガスカル島の南の海域)、調査海域3(インド洋、スリランカの南の海域)、海域4(ハワイ沖)での地磁気観測データから白亜紀スーパークロンの古地磁気変動の記録の読み取り、4)本研究結果の公表、を行う計画である。具体的には以下の通りである。1)調査海域1には、2つの長大なトランスフォーム断層がある。トランスフォーム断層は、海洋底にある大きな傷であり、マントルへの水の取り組みに伴う蛇紋岩化現象が起こる有力な場所だと考えられている。この解析結果と、海上および深海における地磁気観測が行われている他のフラクチャー断層の解析結果も含めて、地磁気異常データに含まれる蛇紋岩化現象に伴う磁化変化を見積り、これによる地磁気異常データへの影響を評価する。2)本研究で得られた成果と観測の経験を生かして、深海地磁気観測機器の整備を行い、本研究で行った研究手法を確立する。3)調査海域2と調査海域3は、インド洋南西部と北部にあり、白亜紀スーパークロンの時期に形成された海洋底が存在する海域であり、フランス船とドイツ船による調査で深海もしくは海上における地磁気観測を行った海域である。一方、海域4は、太平洋にある白亜紀スーパークロンの時期に形成された海洋底が存在する海域であり、本研究による調査は行っていないが、過去の調査で得られた海上で地磁気観測データが使用できる。これらのデータ解析をさらに進めて、白亜紀スーパークロンにおける古地磁気変動の記録の読み取り、それらの相互比較や過去の研究結果との比較などの検討を行い、最終的な結果としてまとめる。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
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