研究課題/領域番号 |
15H05208
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
白岩 孝行 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (90235739)
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研究分担者 |
長尾 誠也 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 教授 (20343014)
楊 宗興 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50260526)
大西 健夫 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (70391638)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 溶存鉄濃度 / 永久凍土 / 土地利用 / アムール川 / ロシア極東 / 水質 |
研究実績の概要 |
平成28年度は2回の野外調査・観測を実施した。第1回調査は、7月3日~7月16日にかけてブレヤ川支流のティルマ川流域において広域採水ならび凍土分布調査を行い、実験流域(ソフロン川流域)を設定して、地温センサーや土壌間隙水調査を実施した。調査には、白岩と大西、ならびに研究協力者2名の大学院生が参加し、ロシア側からは水・生態問題研究所の研究者4名が参加した。これに加え、現地でガイド2名の支援を受けた。
第2回目の調査は、二班に分かれて実施した。広域採水班(白岩・大西)は、ブレヤ川本流の最上流域にあるブレインスキー自然保護区内の各支流において広域の採水を行い、溶存鉄・DOC・栄養塩の各濃度分布を知るための調査を9月21日~9月28日にかけて実施した。また、集中観測班(楊・研究協力者2名)は、7月に設定したソフロン川とその周辺流域において河川水採取・土壌間隙水採取・凍土分布調査・植生調査を実施した。
2回の現地調査により、平成27年度の調査で抱いた以下の仮説はほぼ確認できた。すなわち、ブレヤ川上流および支流のティルマ川上流域には点在的永久凍土が分布し、永久凍土が分布する流域の河川は、永久凍土が分布しない流域を流れる河川に比べ、より濃度の高い河川水を有している。点在的永久凍土は目視で確認することはできないが、点在的永久凍土帯には"マリ"と現地で呼ばれる林床にミズゴケ類を有するカラマツの疎林が発達するため、航空写真や衛星写真で点在的永久凍土帯の分布を間接的に探知できる可能性がある。ランドサットTMデータを使用した予察的な研究では、可視・近赤外データを使用して研究地域のマリの分布を掌握することができた。その分布は、河川の周囲に広がる河間低地と一致していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度に引き続き、本年もゼーヤ川流域の調査を実施することができなかった。その最大の理由は、ブレヤ川の調査地域が当初予定していたよりも広大であり、また、その流域の調査のほとんどがオフロードや河川沿いであるため、極めて調査効率が悪いことによる。ブレヤ川流域では平成27年度と28年度の調査によって着実にデータの収集が進んだが、ゼーヤ川の調査は平成29年度に持ち越すこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、ソフロン川流域における季節を通じた河川水質と凍土分布ならびに活動層厚変化の通年観測を実施し、凍土分布と河川水質との関係を明らかにすることに集中する。とりわけ、最も変化が大きいと考えられる融雪期に観測の焦点を置く。観測を行っていないゼーヤ川流域において広域の河川水サンプリングを行い、ゼーヤ川とブレヤ川の全体像の掌握に努める予定である。 最終年度であるため、これらの現地調査の結果を流域の水文化学モデル構築に供出し、モデルを用いて永久凍土の空間変化が河川水質に与える影響を定量化する。本研究の成果は、平成29年度の夏に札幌で開催することが予定されている国際永久凍土学会や各種学会において発表し、論文作成に着手する。
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