研究課題
ハワイ大・天文学研究所と協力してハワイ・ハレアカラ山頂に口径40cmシュミット(可視)・60cmカセグレン(可視・赤外)を整備し、独自赤外・可視分光器や国内外持込機器を装着した「惑星専用望遠鏡」として活動させた。この基礎の元, (1)木星: イオトーラス・オーロラ・大気活動、(2)火星: 低~高層大気、(3)金星: 低~高層大気(イタリア・ベルギーグループとも共同)、(4)水星・土星:希薄流出大気の長期変動追跡観測を実施。極端紫外線望遠鏡衛星Hisaki(主に木星)、欧Mars Express・米MAVEN(火星)、および本格始動するJAXA Akatsuki(金星)、米Juno(木星)を支える「国際観測網」の一翼を担った。特に太陽風観測を経て7月に周回軌道に入り11月から本格観測に入った米Juno探査機との連動は,国際要請も高く重要な進捗となった。また,ハワイ・マウナケア山頂(Subaru-8m,IRTF-3m)・アタカマ(サブミリ波望遠鏡ALMA)・NASA航空機望遠鏡SOFIAによる赤外・サブミリ波観測提案も実現させ、Hisaki・Juno(木星),Mars Express・MAVEN(火星),Akatsuki(金星)らとの同時観測も実現に至った.昨年度に得た観測データは宇宙望遠鏡・探査機データとともに複数の査読論文・学会講演として確実に結実させたとともに,2016年度に得たデータを論文公表を目指してデータ解析を進めつつある.さらに,観測に伴うマウイ島長期滞在機会を活かして,ハレアカラ山頂でハワイ大・ドイツグループらと共同建設中の1.8m惑星・系外惑星専用望遠鏡の現地作業に参加し,特に主鏡ラフ研磨(東北大資金による)および観測所予定敷地の環境アセスメント作業に対して直接的な貢献を行うことができた.
2: おおむね順調に進展している
(1) 木星のイオトーラス・オーロラ・大気変動(Hisaki・Junoと連動):Juno探査機・Hisakiと連動しイオトーラスとイオ火山活動の長期継続情報を世界唯一提供した。また,Subaru-8m(2016年5月,2017年1月)・IRTF-3m(2016年4-5月,2017年3月)の観測時間を獲得.Juno太陽風観測phase・木星接近観測phase双方で熱圏(CH4:8μm帯、H2:2μm帯)-電離圏(H3+:2・3μm帯)」変動データ取得に成功した.(2)(3) 金星・火星大気の上下間結合(Akatsuki、MEX・MAVENと連動): Akatsuki金星周回観測本格化に伴い、Subaru-8m(2016年5月)でAkatsukiと同時に中間赤外域撮像を実現.山岳部上層・夕方側で大規模波動を捉え,また大気温度分布観測へ校正情報を提供できた。火星ではTGOの本格観測開始が遅延したが,MAVENとの連動は進めることができた.天候制約と冷凍機整備遅延から中間赤外ヘテロダイン装置は本格稼働直前の状況だが,試験観測データを用いたリトリーバル手法確立に至っており,今後の大気力学場・微量成分継続観測の実施見通しを得ることができた。またイタリア・ベルギーチームと航空機望遠鏡SOFIA・アタカマサブミリ波鏡ALMAの共同観測も実現.(4) 水星・土星希薄大気の組成・分布変動の追跡:11月近傍の水星観測好適機に、太陽活動低下中でのNa・K希薄大気モニターを継続実施に成功した。昨年度データと合わせ,太陽活動度依存性を追求するにたる長期均質データ蓄積を進めることができた.またこれまで行なってきた土星衛星エンセラダスから噴出する水分子等の分光観測の成果まとめに入ることができた.(5) ハワイ滞在期間を活かし、共同建設を進める1.8m惑星・系外惑星専用望遠鏡の主鏡ラフ研磨、環境アセスメント、初期観測装置検討を確実に進めた.ドイツチームとも60cm望遠鏡で系外惑星偏光観測試験に成功し,その上限値を示すことができた.なお,博士論文1,修士論文3も本研究の直接成果として得られている.
2017年度には,ハワイ・ハレアカラ山頂東北大40cmシュミット(可視)・60cmカセグレン(可視・赤外)を引き続き拡充し、独自赤外・可視分光器や国内外持込機器を装着した「惑星専用望遠鏡」として活動させる。特に,「液体窒素冷却の冷凍機化」や「持込機器対応の焦点・装置切替の容易化」を本格実装し,望遠鏡リモート運用水準のさらなる向上によって実観測時間の増大と安定運用性の改善に資することが目標となる.2017年度には,引き続き (1) 木星: イオトーラス・オーロラ・大気活動(米Juno探査機,JAXA極端紫外線望遠鏡衛星Hisakiと連動)、(2) 火星: 低~高層大気(米探査機MAVEN,欧探査機ExoMars Trace Gas Orbiterと連動)、(3) 金星: 低~高層大気(JAXA-Akatsukiと連動)、(4) 水星・土星:希薄流出大気の長期変動追跡観測(水星:日欧探査機BepiColombo準備,土星:Cassini探査機と連動)を実施していく。特に,2017年末からようやく本格観測活動を開始することとなった欧の新火星探査機ExoMars Trace Gas Orbiterを支える「国際観測網」の一翼を担う予定である。また,マウナケア(Subaru-8m,IRTF-3m)・アタカマ(サブミリ波干渉計ALMA)・航空機望遠鏡SOFIA等の大口径赤外・サブミリ波望遠鏡によるプロポーザルベース観測も引き続き提案・実現させ、これらとの連動成果も挙げていく。さらなる重要目標は,2015-2016年度に実施してきた観測データを投稿論文としてまとめ上げることであり,最終年度の内に一定の成果として目に見える形を形成したい.さらに,ハレアカラ山頂1.8m惑星・系外惑星専用望遠鏡作業,特に主鏡最終研磨の実現と観測所建屋建設着手の実現に,現地滞在機会を活かして直接的な貢献を形成したい。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 3件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 11件、 招待講演 4件)
Parity
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