研究課題/領域番号 |
15H05213
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
長谷川 卓 金沢大学, 自然システム学系, 教授 (50272943)
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研究分担者 |
堀川 恵司 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (40467858)
山本 正伸 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (60332475)
守屋 和佳 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (60447662)
神谷 隆宏 金沢大学, 自然システム学系, 教授 (80194976)
森下 知晃 金沢大学, 自然システム学系, 教授 (80334746)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 白亜系 / 古水温 / カンパニアン / 酸素同位体比 / マーストリヒチアン |
研究実績の概要 |
カナダ・ブリティッシュコロンビア州・ホーンビー島およびハイダグアイ(クイーンシャーロット諸島)グレアム島の地質調査および試料採集を行った.ホーンビー島については長谷川と研究協力者(大学院生)が追加調査を行い,特に同島北側でスプレー層上部を中心として新たな試料を採集した.またノースアンバーランド層最上部のコリショウポイント付近の海食台において追加の泥岩試料および大型化石試料を採集した.その際,クレーターの形状をした,約2.5mの直径を持つ特異なコンクリーションを発見したため,試料採集を行った.グレアム島については,現地の研究協力者(共同研究相手先)のカナダ地質調査所のJim Haggart博士と共同で調査を行い,前年採集できなかった白亜系試料を採集することができた.以上の調査で得た化石についてはカナダ現地でHaggart博士によって鑑定された.また同博士からはカナダ地質調査所が保管している多数の化石試料の一部から分析用試料を分取する許可をいただき,採取した.ホーンビー島の泥岩試料は対比のための有機炭素同位体比分析を行い,また得た化石については電子顕微鏡写真の撮影を進め,一部の試料は酸素同位体比分析にふさわしい保存状態を維持していることが分かった.さらにホーンビー島から得たクレーター型コンクリーションについて記載,SEM観察,酸素・炭素同位体比分析,XRD分析などを総括的に進めた結果,当時のメタン湧水起源であることが明らかになった.これはカナダ太平洋岸の白亜系(ナナイモ層群)からは最初の発見となった.またその酸素同位体比が,海底古水温を反映していることもわかった.海底古水温の推定は本研究の当初の目的に合致する.得られた古水温は安定し約10度であり,当時の古緯度が北緯約25-30度であることを考えると非常に寒冷であった.この成果は論文投稿間近な状況になっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度,期待した試料が得られなかったグレアム島では順調に試料採取ができた.またホーンビー島からは予期せず海底直下で形成された大型のコンクリーションを発見することができ,これから当時の古水温を推定できることが分かり,実際に古水温を得ることができたため,研究は大きく前進した.
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今後の研究の推進方策 |
上述の大型コンクリーションを用いたカンパニアン期最後期の海底古水温に関しては今年度中に論文を出版できると考えている.また水柱の水温を反映するアンモナイト化石についても,少なくとも一部は保存状態が良好であることが分かっているため,積極的に酸素同位体比分析を進めていく.また,マーストリヒチアン階であると推定されるスプレー層については,微化石処理を進め,年代の確定を目指すと同時に,イノセラムス化石片の有無を検討することでMME(中部マーストリヒシアン期イベント)の認定に努める.カンパニアン階のノースアンバーランド層の一部の試料からは魚の歯化石も得ており,これらはネオジムの分析を進める予定である.
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