研究課題/領域番号 |
15H05214
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大路 樹生 名古屋大学, 博物館, 教授 (50160487)
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研究分担者 |
長谷川 精 名古屋大学, 博物館, 准教授 (80551605)
井龍 康文 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00250671)
高柳 栄子 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40729208)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Ediacaran / Cambrian / Trace fossil / algae / Mongolia |
研究実績の概要 |
モンゴル西部ゴビ・アルタイ地域およびザブハン地域のエディアカラ系、カンブリア系の地質調査と古生物調査を行い、下記の新たな発見を行った。 1.ザブハン地域ズーンアツのエディアカラ系から藻類化石の発見: エディアカラ系からの藻類化石は中国、アメリカ等から報告されているが、モンゴルからは発の発見である。この藻類が含まれている堆積岩は、「バージェス頁岩タイプの堆積岩」、すなわち通常保存されにくい生物の軟組織が保存される堆積岩であることがわかった。「バージェス頁岩タイプの堆積岩」はカンブリア系には良く見つかっているが、エディアカラ系からは珍しく、今後この堆積岩から動物体化石の発見が期待される。この結果はScientific Reports誌に共同で発表した。 2.ゴビ・アルタイ地域バヤンゴル渓谷のエディアカラ系からの生痕化石の発見: 今までわれわれの研究グループによって発見された生痕化石の層序的分布を広く確認し、また生痕自体の構造を立体的に把握することができた。その結果、生痕の大半は垂直方向のシャフトから成ること、一部がU字状の構造を持つこと、その分布は底質の硬さに依存していた可能性のあること(おそらくバクテリアマットなどの固い底質が生痕の成長を寄生していた可能性のあること)、これらの生痕の形成者は左右相称動物である可能性が非常に高いことなどが明らかになった。この結果は投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
モンゴル西部の2地域での調査、研究が順調に進行しており、予想以上の結果が得られている。なかでもザブハン地域での新たな藻類化石の発見と、生物軟組織が保存される「バージェス頁岩タイプの堆積岩」の発見は、2015年度調査の大きな成果であり、この結果を国際誌に発表した。またゴビアルタイ地域バヤンゴル渓谷の生痕化石の研究も大きく進んでおり、同じくエディアカラ系に左右相称動物が存在した強い証拠を見出したことになる。この結果も近く投稿できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度発見したズーンアツの「バージェス頁岩タイプの堆積岩」を再度訪問、調査し、さらなる多様な生物の軟組織を含んだ化石の発見に努める。またエディアカラ系とカンブリア系の新たな分布地として、ゴビ・アルタイ地域西部のクク・ダヴァを初めて訪れ、地質調査と古生物調査を開始する予定である。この地域から新たに生痕化石や藻類化石の発見に努める。これらの調査研究を通じ、エディアカラ系後期にモンゴルで観察される生命進化の実態を実証的に明らかにしていく予定である。
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