研究課題
モンゴル西部のズーンアツに分布するエディアカラ系上部の調査を行い、2016年初頭に学術誌で発表した藻類化石の追加標本を採集するとともに、多細胞動物の痕跡を探るためにバイオマーカー分析用資料の採取を行った。またこの地域のエディアカラ系を他地域と対比するため、炭酸塩資料を多数採集し、高精度の炭素同位体比変動プロファイルを得た。この結果を中国やモロッコのセクションの炭素同位体比と対比した結果、ズーンアツのセクションがエディアカラ系の最上部に対比されることが明らかになった。またこのセクションの一部の炭素同位体比が系統的にプラスにずれる現象が観察され、このことから少なくとも一時期は、閉ざされた海洋環境で生物活動が活発化したことが示唆された。今までの調査によってモンゴル西部のバヤンゴル渓谷のエディアカラ系上部から発見された、垂直構造を持つ生痕化石についてさらなる形態解析を進め、3次元の解析から、これが海底表面から深さ4㎝程度まで潜る構造を持つこと、基本的にU字型の形態を持つこと、一部が横方向につながったネットワーク構造を持つことなどが明らかになった。このような構造を持つ生痕は従来カンブリア紀以前の生痕には知られておらず、極めて重要な発見となる。この結果の一部は現在国際誌に投稿中である。モンゴル西部のフフダバにおけるエディアカラ系上部の地質調査を行い、この地域のエディアカラ系が他地域と比較して浅海環境にあること、そのためにストロマトライト以外の化石や生痕化石の産出が極めて少ないことが理解された。
2: おおむね順調に進展している
2016年度にズーンアツのエディアカラ系での藻類化石の発見(2015年度後半に報告)以降、バイオマーカーを含む分析を進めており、今後の結果が期待される。またバヤンゴルで行っているエディアカラ系の生痕化石の分析から当時複雑な生痕を形成する動物の存在が示され、生痕化石から左右相称動物の存在を強く示唆する結果が得られた。これらの重要な成果は、研究が順調の進行していることを示している。
今後炭酸塩岩に含まれている小型有殻化石群の抽出と分析を進め、これらの生層序の確立している中国との対比を進める予定である。また小型有殻化石自体の微細な観察を通じて、これらの生物がどのような分類群に含まれるのか、その実態を明らかにしたい。また更なるエディアカラ系の生物痕跡を求め、特に頁岩部に含まれる微細な化石の発見を進めたい。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Geological Magazine
巻: - ページ: -
org/10.1017/S0016756816000844