研究課題/領域番号 |
15H05217
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
矢田部 龍一 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (70127918)
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研究分担者 |
長谷川 修一 香川大学, 工学部, 教授 (00325317)
N.P Bhandary 愛媛大学, 社会共創学部, 准教授 (10363251)
二神 透 愛媛大学, 防災情報研究センター, 准教授 (40229084)
羽藤 英二 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (60304648)
安原 英明 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (70432797)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヒマラヤ水系 / 土砂災害 / 地震災害 / 防災教育 |
研究実績の概要 |
本研究では、ヒマラヤ水域のモデル国家として、ネパールを主として、流域一帯の大規模な土砂災害に対して、減災のために戦略的な総合防災研究を行うことにしている。また、2015年4月には大地震が発生し、9千名近い犠牲者が出た。近い将来にさらに大規模な地震の発生が予想されている。そこで、地震災害へのソフト防災対応として小中学生を対象にした組織的な学校防災教育と地域住民を対象とした防災教育の展開を予定している。さらに、ヒマラヤ水系をフィールドにした世界最先端の自然災害研究を行うと共に、すでに成立しているヒマラヤ水系に係る国際学会を発展させ、世界的な研究者ネットワークを構築する。以下に示す取り組みが進捗している。 ・土砂災害と地震災害も含めて、大規模自然災害に係るネパールの被害について解明している。この2年間は、特にネパール・ゴルカ地震による地すべり災害の特徴とカトマンズ盆地の地盤構造と建物被害の関係について明らかにしている。・立案しているネパールの戦略的総合防災計画を検討するとともに他国にも展開する方策を検討している。・ネパール国文部省と連携して学校防災教育を全国展開するとともに、他国でも試行するための仕組みづくりを行っている。・2011.8.15に設立したヒマラヤ水系地すべり学会(Himalayan Landslide Society(HiLS)の世界的な研究者ネットワークを核に、ネパール国の防災関係国会議員との防災セミナーの開催、ならびに国際シンポジウム開催を通して、防災への取り組みとともにヒマラヤ水系防災学の学術的深化を図りつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一昨年の4月に発生したネパール・ゴルカ地震の被害調査を精力的に行った。また、ネパール国会新防災法案策定委員会の議員とネパールの防災推進に関して会議やシンポジウムを開催してきている。以下に示す結果が得られ、また、研究課題が着実に進捗しつつある。 ・すでに構築しているネパールの大規模地すべりデータベースに追加して、今回の地震による地すべり地のデータベースを追加し、地震による地すべりの発生機構に関して検討を行っている。・カトマンズ平野地盤の動的物性を明らかにし、建物被害との関係を検討している。また、地震動解析を実施している。・ネパール・ゴルカ地震の発生を受けて、ネパール政府では新防災法案の策定に取り組んでいる。この防災法案に関して、策定委員会の議員と会合を重ねている。また、シンポジウムを開催して、国会議員による選挙区での防災の取り組み策についての検討をしている。防災プログラムの推進に向けて、マニュアルの策定に取り組んでいる。 ・ネパール大統領のナショナルキャンペーンの一つに、ソフト防災対応としての防災教育の推進を入れてもらうことにしている。取り組む防災教育としては、学校防災教育とともに地域防災教育にも取り組む。そのため、地域の防災教育拠点施設の建設に取り組むこととした。防災教育拠点の建設に関しては、日本大使館の草の根支援を活用することとしている。・昨年の12月には、防災に関するシンポジウムをカトマンズで開催し、ネパール・ゴルカ地震の被害概要に関して情報収集をはかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は最終年度である。そのため、科研費研究による解明を目的とした当初の各研究課題に関して取りまとめを行ない、報告書にまとめる。また、ネパール・ゴルカ地震に関して、被害概要の取りまとめるとともに、住居の耐震性向上のための経済的な補強策についても検討する。それとともに、国家レベルでの防災教育実施のモデルを構築する。・ヒマラヤ水系の流域保全に関する、地すべり、土砂流出、植生、洪水被害などの一連のデータベースを構築する。 ・学校防災教育の推進に関しては、学校防災教育テキストを作成するとともに、モデル校で実施し、全国的な展開策を検討する。・地域防災教育に関しては、地域防災教育拠点において、防災教育を試行的に実施する。防災教育推進のために、地域住民向けの防災教育テキストの開発とともにネパール防災士資格制度を構築する。・ネパール・ゴルカ地震の被害概要をまとめるとともに、カトマンズ盆地の詳細な地盤データベースを構築し、地震動解析により、今回の被害の特徴的な分布特性を解明する。その解析法を用いて、来るより巨大な地震に対する地盤の動的応答を解析し、構造物の耐震性について検討を加える。・これらの研究成果をヒマラヤ地域保全学会主催の国際シンポジウムで広く公開する。それとともに、多くの国際学術雑誌に投稿し、公開をはかる。
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