研究実績の概要 |
本年度では,タイ国チャオプラヤー川流域を対象として,海面水温から大規模ダム貯水池(Bhumibolダム貯水池,Sirikitダム貯水池) の流入量を予測する手法の開発を目的として,Bhumibolダム貯水池,Sirikitダム貯水池の2つの大規模貯水池が運用を開始してから2014年12月までの流入量, 降水量を基に,インド洋, 太平洋の海面水温を考慮した流入量予測を試みた。 海面水温データは,55年長期再解析(JRA55)データである. 1964~2014年までのIOBW(南緯20 度-北緯20 度,東経40 度-東経100 度),NINO.WEST(北緯15 度-赤道,東経130 度-東経150 度),NINO.3(北緯5 度-南緯5 度,西経150 度-西経90 度)NINO.4(北緯5 度-南緯5 度,西経90 度-西経40 度),NINO.34(北緯5 度-南緯5 度,西経120 度-西経70 度)の5地点の範囲の月平均海面水温の領域平均を用いた.Bhumibolダムは,1964年6月~2004年12 月,Sirikitダムは,1974年1月~2004年12 月(学習期間)の5地点(IOBW, NINO.WEST, NINO.3, NINO.4, NINO.34)の月海面水温を説明変数,流入量を目的変数として,重回帰分析を行ったところ以下の事が明らかになった. 予測の精度を上げるために,エルニーニョ現象期間抜き・ラニーニャ現象期間抜きの場合,NINO.3とNINO.4と月降雨量のみ場合, 海面水温5地点と降雨のうち,NINO34を抜いた場合,NINO.3とNINO.4とNINO.WESTと月降雨量のみ場合でそれぞれ重回帰分析を行った.その結果,●Bhumibolダムにおける,重回帰式の計算値と実測値の相関で最も強かった条件は,学習期間の場合は5地点と降雨量説明変数とした時,試験期間はNINO.3 ,NINO.4, NINO.WEST 降雨量を説明変数とした時であった. ●Bhumibolダムにおける,月流入量が80 mmを上回る年のみの重回帰式の計算値は実測値が80 mmを超える値の時,80 mmを上回る値があるが,実測値が100 mmを上回る時,重回帰式の計算値では100 mmを上回ることができなかった.
|