研究課題/領域番号 |
15H05223
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
渡部 徹 山形大学, 農学部, 教授 (10302192)
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研究分担者 |
本多 了 金沢大学, 学内共同利用施設等, 助教 (40422456)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 薬剤耐性菌 / 下廃水処理 / 熱帯アジア / 遺伝子解析 / 耐性遺伝子 / 次世代シークエンス / タイ |
研究実績の概要 |
【研究項目1.活性汚泥リアクターを用いた都市下水処理実験と活性汚泥細菌叢の解析】 実験室規模のリアクターの安定運転に時間を要したために,本年度は実処理施設を対象に活性汚泥細菌叢の解析を行った。ただし,タイと日本の地域による違い,都市下水と病院排水(抗生物質濃度が高い)という処理対象の違いに着目して解析を行った。反応槽内の汚泥混合液から抽出した遺伝子を鋳型として,16SrRNA遺伝子をPCRで増幅し,そのアンプリコンを次世代シーケンサーで解析した。その結果,日本の都市下水処理場の活性汚泥ではコマモナス科やロドシクルス科の細菌が多かった。タイの都市下水処理場の汚泥細菌は解析中である。病院排水処理施設についてはタイの3施設で調査を行ったが,共通して確認される細菌が多い中で,Sphigobacterales目の細菌の割合がA病院(排水中のサルファメソキサゾール濃度が高い)で突出しているなどの特異性も見られた。 【研究項目2.都市下水処理にともなう薬剤耐性遺伝子の消長に関する研究】 標準活性汚泥法を採用した下水処理場で単離した大腸菌各50株を対象として,キノロン系薬剤耐性遺伝子の保有率を調べた。その結果,6種のキノロン系耐性遺伝子のうち,検出されたものはqnrSまたはaac(6')-Ibの2種のみであった。qnrS保有率は流入下水と初沈越流水では30~35%だったのに対して,活性汚泥,返送汚泥,終沈越流水では40~50%程度に増加していることがわかった。 【研究項目3.薬剤耐性遺伝子を保有する細菌種の特定】 耐性遺伝子を保有する細菌種を特定するために,日本で採取した汚泥細菌を抗生物質を添加した無選択培地で培養し,細菌叢の変化を調べた。その結果,テトラサイクリンにはコマモナス科が,カナマイシンには腸内細菌科などの細菌が強い耐性を持ち,耐性遺伝子を他の細菌に伝播させる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験室規模のリアクターの安定運転に時間を要したために,研究計画を若干変更する必要があったものの,実処理施設での調査でも意義のあるデータが得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
当初,研究項目3では,耐性遺伝子が存在するプラスミドの種類から,それを保有する細菌種を特定する計画であったが,そのプロセスには困難が多いことが分かった。すでに今年度から代替の方法(これは申請時から想定していた方法)を適用しているが,今後もこの方法を続ける予定である。
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