研究課題/領域番号 |
15H05225
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
山本 直彦 奈良女子大学, 生活環境科学系, 准教授 (50368007)
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研究分担者 |
増井 正哉 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (40190350)
向井 洋一 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (70252616)
吉田 哲也 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (80294164)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ネパール / 世界文化遺産 / 景観 / 都市組織 / バクタプル |
研究実績の概要 |
これまでA:意匠景観、B:生活空間、C:都市型住居、D:地震被害の4チームで現地調査を実施してきた。平成29年度は、まず、これまでの成果をAチーム1本、B・C合同チーム1本の計2本の査読論文を日本建築学会計画系論文集に発表した。これによって各チームとしては、一定の研究成果を達成したが、さらに、この成果を元にA~Cチームの研究成果を統合する仮説を立てることを試みた。B・C合同チームの成果である【都市型住居の平面類型や配列関係】から読み解いた都市形成史が、Aチームのテーマ【都市型住居の意匠・景観】に密接に関係しているという仮説である。 9月現地調査の全容は、①この仮説検証のための調査地選定と調査実施(A~C合同)に加えて過年度から引き続き、②世界遺産モニュメントゾーン外の都市型住居の修理・建て替え状況のモニタリング(A・D合同)、③常時微振動計測による都市型住居の耐震性能検証の継続(D)である。特に①については、仮説を実証することができ、チーム間の研究目的と成果を高度に統合することができた。簡単にまとめると、B・Cチームが導いた都市組織の視点からは街路の特定の側の都市型住居がオリジナルで、反対側の住居は新しいという街路・街区の形成プロセスは、2世紀程度のタイムスパンの中で形成されてきたもので、その間に外観様式の変化や住宅平面の簡素化が発生した結果、Aチームは街路両側で都市型住居の外観や景観が異なる見解を得たということである。 研究チーム全体では、上記以外に、A~Cチーム5本、Dチーム2本を日本建築学会で研究発表した。 平成29年度から研究分担者を追加した統計解析チームについては、Aチームの外観意匠調査データから、都市型住居の外観意匠モデル化を行うための一連の分析プロセスを自動化するプログラムの作成を行った。これにより市販ソフトと比較して、分析の大幅な効率化が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、大きくは2015年ネパール・ゴルカ地震発生前に、世界文化遺産都市の都市組織から見た都市形成過程と都市型住居の外観意匠から見た景観を大きく2つの視点として計画されたものである。本年度の研究実績で示したように、両者の視点の密接な関係性がすでに明らかにされ、都市形成史と景観形成のメカニズムを統合して見る成果が得られたことは当初の計画以上の成果を上げている。 以上に加えて、地震発生を踏まえて都市型住居の耐震性能の現地調査を行っていること、復興や都市型住居の再建に役立てるため景観の統計解析視点を導入したことも当初の計画には無かったものであり、研究はより発展的に実施されていると考えている。 また、本研究の内容で、平成29年度に奈良女子大学において1名が博士学位を取得した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、最終研究年度であるため、これまでの研究成果のまとめと発表に重点を置く。日本建築学会大会に、Aチーム2本、B・Cチーム2本、Dチーム2本の成果発表を予定している。また、日本建築学会計画系論文集にEチームの研究成果を用いて、外観意匠の統計解析を踏まえた論文投稿を予定している。 一方、9月に予定している最終年度のネパール現地調査では、これまで行ってきた都市型住居の復興・再建状況、その耐震性能の検証を引き続き実施する計画である。
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