デングウイルスの全血清型(1-4型)に保存されるゲノム配列に対して、相補塩基配列を持つペプチド核酸(anti-PAN-DV-PNA)を合成し、これをクロマトグラフィー上に固定化した核酸クロマトを作成した。前記クロマトグラフィーに対して、デングウイルスに2回以上感染して重症化した患者の血清成分に界面活性剤を加えた検体を作用させ、ウイルスゲノムを捕獲できるかを評価した。 その結果、臨床検体中に含まれるデングウイルスのゲノム-蛋白質複合体をテストライン上のAnti-PAN-DV-PNAでウイルスゲノムを捕獲し、同ゲノムに随伴する蛋白質を金コロイド修飾抗体により可視化できることがわかった。一方で、デングウイルス感染細胞から分泌されるウイルス非構造蛋白質(NS1)を検出する抗体(anti-NS1)を塗布したクロマトグラフィーを用い、デング熱重症患者の検体を評価した。その結果、NS1検出ラインに明確なバンドが現れなかった。本結果から、一度デングウイルスに感染した患者の血中には、再度デングウイルスに感染した場合、NS1を中和するanti-NS1が分泌され、これがクロマトグラフィー上のanti-NS1と競合することで検出感度が低下する可能性が示唆された。 次に、デングウイルス血清2型(DV2)のゲノム配列を標的とする蛍光修飾ペプチド核酸(anti-DV2-PNA-Fluoro)を合成し、DV2の精製ゲノムRNAを溶液中にて配列特異的に捕獲できるかを蛍光相関分光法により解析した。その結果、anti-DV2-PNA-FluoroはDV2のゲノムRNAと配列特異的に会合し、デングウイルスの血清3型(DV3)のゲノムRNAとはほとんど会合しないことが確認された。このことからanti-DV2-PNAは、デングウイルスの約2万塩基からなるゲノムRNAの保存標的配列を特異的に認識することが示唆された。
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