研究課題/領域番号 |
15H05232
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
梶田 忠 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (80301117)
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研究分担者 |
青木 誠志郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (10334301)
高山 浩司 ふじのくに地球環境史ミュージアム, 学芸課, 准教授 (60647478)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 共生特異性 / 生物間相互作用 / 根粒菌 / マメ科植物 |
研究実績の概要 |
■現地調査: La Laguna大学のMilagros Leon-Barrios博士およびMarcelino J. del Arco Aguilar博士との共同研究体制の下、現地調査を行った。H28年11月にTenerife島およびGran Canariaにおいて、島毎に固有のLotus属植物種数種と土壌サンプルを採集した。採集した土壌サンプルについては、La Laguna大の研究室においてDNA抽出を行った。また、野外で採集した根粒からもDNAを抽出し、日本で解析に用いた。 ■現地機関での培養・栽培実験: La Laguna大の研究室の実験環境を用いて、現地で採集した根粒菌の単離・培養実験を行った。また、一部のサンプルは日本に持ち帰り、上記実験に加えて、相互移植実験と実生の生長量を測定を開始した。 ■土壌メタゲノミクス解析: 現地で抽出した土壌DNAサンプルを、Illumina Miseqシーケンサを用いてメタゲノミクス解析に用いた。昨年度に開発し根粒菌根粒菌特異的プライマーを5セット用いてPCR増幅を行い、土壌メタゲノム内での根粒菌ゲノム、および、共生特異性を司る遺伝子群の存在動態を確かめることができた。 ■データ解析:今年度の研究出、カナリー諸島に固有のいくつかのLotus属植物の根粒に存在する根粒菌と、生育地の土壌に存在する根粒菌相を比較した。これにより、本研究で目的としている、 土壌根粒菌相の分化は環境毎に生じているかどうか、また、生じている場合、土壌中の根粒菌相がLotus属植物との共生特異性に影響しているかどうかという問いについて答えるための、今後の研究の方向性を決めることができた。また、これに関連して、根粒菌の地理的分布を広域分布マメ科植物で明らかにし、論文発表した。 ■本研究には、千葉大学大学院理学研究科博士前期課程の番場大が研究協力者として参加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画調書の段階では、1年間に調査を2回と、現地機関での実験を数ヶ月間実施する計画であったが、交付決定時に助成額にあわせて全体の計画を縮小して実施している。現在の計画は、年1回の現地調査、現地機関での実験は短縮して実施、国内での栽培実験およびメタゲノム解析実験という構成で研究を実施している。H27年度に生じた予定していたポスドク候補者の異動に伴う事業の繰越しも、H28年度中には予定りに進捗した。 H27年度から開始したLa Laguna大の研究者との共同研究は、順調に進んでいる。現地共同研究者の努力により、短期間の現地訪問でも十分な成果を上げることができるよう、調査日程を綿密に計画し、極めて効率的に現地調査を行えるようにした。 以上の理由から、現在までの進捗状況は概ね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画は以下のように推進する。現在までの進捗状況を見る限り、予定通りに進捗することが見込まれる。 ■現地調査: H29年度 1回、H30年度 1回・現地研究者招聘1回 ■現地機関での実験: H29年度、短縮して1回。短縮分は国内での栽培実験としてH29, 30年度に実施 ■メタゲノム解析実験: H29年度、H30年度ともに実施。 ■成果公開: H29年度にまとめ、H30年度中に出版。H30年度8月には第7回マメ科国際学会、および、日本植物学会でシンポジウム開催 これまで、研究を進める上で予想外に時間がかかっているのは、根粒菌のコンタミの問題と栽培実験の部分である。コンタミの問題というのは、現地調査で得た根粒から抽出したDNAから根粒菌特異的プライマーを用いて根粒菌を同定したが、根粒の外側に付着していた根粒菌がどの程度データに含まれているか判別できていない点にある。この問題については、次年度に、根粒全体からDNA抽出を行った場合と、内部組織のみを用いた場合の結果を比較するなどして、解決できる見込みである。また、栽培実験の問題は、現地研究機関での栽培実験を短縮したことと、その短縮分を日本国内で実施するための環境整備が必要になったことによる。現状で、国内で実験を行って必要なデータを得る目処がついたので、次年度以降も同様の方針で研究を実施する。
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