研究課題
ヒメミカヅキモは、遺伝的に決定された性を持つ複数のヘテロタリック株交配群と、それらとごく近縁で自殖による接合を行うホモタリック株を含む一形態種であり、その有性生殖過程を分子生物学的に解析する基盤が整備されてきている。しかし、現存株の接合能は、継代培養の間に大きく低下しており、以後の研究に使用できない状況であった。本研究では、国外、国内の数カ所の拠点を調査し、生殖様式と系統関係を明らかにしつつ、絶対的に不足している多様な系統株を確立することを目的としている。本年度は、6月にオーストリアに出向き、現地藻類研究者との打合せを行い、予備的なサンプリング調査を行った。また、これまで系統株が失われていた交配群IICの単離に成功した。交配群IICについては、近縁なホモタリック株がすでに単離されており、少なくとも3つの交配群(IIA, IIB, IIC)について、接合能を持つ系統株が揃い、それらと近縁なホモタリック株も揃うこととなった。さらに、生殖隔離関係にある交配群IEとGの生理学的解析も進め、GのPR-IPがIEにほとんど作用しないことが、生殖隔離の主な原因であることを明らかにした。いくつかの既存ヘテロタリック株、ホモタリック株について、Illuminaによるゲノム解読およびRNAseq解析を進めているが、交配群IIBに近縁なホモタリック株について、ゲノムレベルでヘテロタリック株との比較を行うため、PacBioシークエンサーでの解析に耐えられる高品質ゲノムの単離を行った。
2: おおむね順調に進展している
失われた交配群IICの単離に成功したため、3つの交配群(IIA, IIB, IIC)について、接合能を持つ系統株が揃い、それらと近縁なホモタリック株も揃い、生殖様式進化の解明のための最低限必要な株が整ったことになる。また、交配群IEとGの関係性の解明も進んでおり、概ね順調である。
現地の情勢を踏まえて、海外拠点および国内の調査を進める。また、ゲノム解析、RNAseq解析を進め、生殖様式の切換に関わる普遍的な機構を見出す。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Journal of Plant Research
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Bio-protocol
巻: 6 ページ: e1813
Frontiers in Plant Science
巻: 7 ページ: 1040-1040
10.3389/fpls.2016.01040