研究課題
ヒメミカヅキモは、遺伝的に決定された性を持つ複数のヘテロタリック株交配群と、それらとごく近縁で自殖による接合を行うホモタリック株を含む一形態種であり、その有性生殖過程を分子生物学的に解析する基盤が整備されてきている。しかし、現存株の接合能は、継代培養の間に大きく低下しており、以後の研究に使用できない状況であった。本研究では、国外、国内の数カ所の拠点を調査し、生殖様式と系統関係を明らかにしつつ、絶対的に不足している多様な系統株を確立することを目的としている。本年度は、10月にネパール、11月にタイに出向き、現地藻類研究者との打合せを行い、サンプリング調査を行った。その結果、ヒメミカヅキモと思われるいくつかの株の取得に成功したものの、18s DNAのgroup I intron領域を用いた系統解析の結果では、既存のヒメミカヅキモ交配群の外側にクレードを形成するものが多く、形態観察と必ずしも一致しないという結果を得た。生殖隔離関係にある交配群IEとGの生理学的解析も進め、Gの接合子形成が、IEの存在により一方的に影響を受けるという、生殖干渉と思われる現象を見出した。また、いくつかの既存ヘテロタリック株、ホモタリック株について、Illuminaによるゲノム解読を進めているが、加えて交配群IIBに近縁なホモタリック株1系統について、ゲノムレベルでヘテロタリック株との比較を行うための、PacBioシークエンサーでの解析データを取得した。このアセンブルデータをリファレンスとして、各株のゲノム構造の精査を進めた。
2: おおむね順調に進展している
今年度においては、新規交配群の確立には至らなかったが、これまでに5つの生理学的研究に耐えうる交配群の確立に成功している。交配群IIBに近縁なホモタリック株については、PacBioシークエンサーによるアセンブルデータを取得できたため、ゲノム構造の比較のための準備が整っており概ね順調である。
現地の情勢を踏まえて、海外拠点および国内の調査を進める。また、ゲノム解析、RNAseq解析を進め、生殖様式の切換に関わる普遍的な機構を見出す。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件)
PLOS One
巻: 12 ページ: e0180313
10.1371/journal.pone.0180313
Sci. Rep.
巻: 7 ページ: 17873
10.1038/s41598-017-18251-8