研究課題
ヒメミカヅキモは、遺伝的に決定された性を持つ複数のヘテロタリック株交配群と、それらとごく近縁で自殖による接合を行うホモタリック株を含む一形態種であり、その有性生殖過程を分子生物学的に解析する基盤が整備されてきている。しかし、現存株の接合能は、継代培養の間に大きく低下しており、以後の研究に使用できない状況であった。本年度は、10月にネパールに出向き、現地藻類研究者との打合せを行い、サンプリング調査を行った。その結果、ネパールから、ヒメミカヅキモと思われるいくつかの株の取得に成功し、18s DNAのgroup I intron領域を用いた系統解析、および既存の交配群との接合試験を進めた結果、新規交配群Hとして確立することに成功した。また、生殖隔離関係にある交配群II-AとII-Bの生理学的解析も進めた。交配群II-Aの+型細胞と交配群II-Bの-型細胞はハイブリッドな接合子を形成するが、II-Aの-型細胞 とII-Bの+型細胞は接合反応を示さないという、不完全かつ非対称な生殖隔離が見られる。各交配群どうしで接合誘起した場合と、両交配群の+型と-型の4者を同所で混合した場合を比較したところ、II-A +型細胞 とII-B -型細胞のみの混合に比べ、4者混合ではハイブリッド接合子が減少し、交配群II-AとII-Bが混在する場合でも、同じ交配群と選択的に接合する生殖隔離機構の存在が示唆された。この機構の詳細を解析するため、タイムラプス撮影を行い、接合過程を連続観察した。4者混合でハイブリッド接合子形成が低下する理由として、交配群II-AとII-Bの間で接合子形成のタイミングが異なっており、II-Aの接合反応があらかた終了した後に、II-Bの接合子が形成されるために、II-Aとのハイブリッド接合がほとんど行われないことが考えられた。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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