研究課題
1)2018年1月に南大洋アデリーランド沖(東経110度トランゼクトとその周辺海域)において約2週間にわたり海洋観測を行った。プランクトン採集に使用したギアは鉛直多層式開閉ネット(VMPS)、ORIネット、ニスキン採水器などであった。本研究のメインターゲットであるハダカイワシ科魚類の仔魚の他、VMPSや二スキン採水器では、餌生物となる動物プランクトンの採集が行われた。2)ハダカイワシ仔魚の消化管内容物について、昨年度までの分析結果からデトリタス(有機物塊)が一定量見出された。デトリタスは5から14 mmまでのすべてのサイズクラスの仔魚から見いだされた。一般的な仔魚の餌として知られる動物プランクトンは、このサイズ範囲において5%から23%に出現頻度が増大した。全体の比率においてデトリタスが餌として重要であることが示唆された。これらのデトリタスについて走査型電子顕微鏡による観察を行った結果、凝集体を構成していた珪藻片は不定形物や尾虫類のハウスの一部と考えられる構造物で結合していた。3)仔魚のふ化日を逆算する目的で耳石から日齢を求める試みを行った。その結果、体長と日齢との関係に一次回帰式を得た。この結果は、体長から日齢を推定するのに役立つが現時点ではサンプル数が十分とはいえない。4)ハダカイワシ類と同様、南極海で重要な中深層性魚類であるハダカエソの1種について仔魚の分布を調べた。ハダカエソ仔魚はハダカイワシと非常によく似た分布パターンを持つことが分かった。このことは、ハダカエソとハダカイワシが同じ水塊をナーサリーグラウンド(養育場)として利用していることを意味し、仔魚にとって共通かつ有利な要素を備えていることを示している。
2: おおむね順調に進展している
1)海洋観測は予定通り実施され、研究を遂行するために必要な生物サンプルが得られている。2)全体的にサンプルの解析が進んで、一定の学会発表を行った(国際学会1件を含む)。3)胃内容物中のデトリタスについて解析が進んだが、論文発表に至っていない。4)日齢の解析について結果を得たが、個体数が十分ではなく論文発表に至っていない。
1)国内での学会(10月、12月)において、合計5~6件の発表を行う。国際学会(4月)には1件の発表を行う。2)これまで得られたサンプルの解析をさらに進め、2018年度の投稿を目指す。3)2019年1月に南極海アデリーランド沖(東経110度トランゼクトとその周辺海域)において海洋観測を実施する。ハダカイワシ仔魚の消化管内に見出されるデトリタスのDNA解析を行うためのサンプルを採集する。4)耳石分析用のサンプルを採集する(特に体長15-30 mm)。このために大型のネットを使用する。5)仔魚の胃内容物組成と合わせて、安定同位体比の分析により仔魚の食性分析を高精度化する計画であったが、学内の分析装置の故障により現在停止している。今年度学外の装置を借用し分析を進める計画である。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 オープンアクセス 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 5件)
JARE Data Reports, National Institute for Polar Research
巻: 363 ページ: 1-13
Polar Science
巻: 12 ページ: 1-4
巻: 12 ページ: 19-24
巻: 12 ページ: 69-78
巻: 12 ページ: 88-98
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